[今日の絵] 3月後半

[今日の絵] 3月後半

17 Vermeer : Lady with Her Maidservant Holding a Letter 1667

「手紙」は絵に多く描かれる主題、その理由は、手紙を読んだり書いたりする人の表情に独特なものがあり、そこに他者との関係が如実に顕れるからだろう、画家はその表情を鋭く捉える、この絵の右側の女性は「意外」という表情か

 

18 Jacob Ochtervelt : The Love Letter 1670s

当の女性は右手が大きく開いている、手応えのあるラブレターだったのだろう、「うん」と小さく頷いている感じ、彼女の髪を梳かしている後ろの女性は手紙をじっと覗いている、ジェイコブ・オクターベルト1634~82はオランダの画家、フェルメールと同時代人

 

19 Henry Nelson O'Neil: letter writer 1860

オニール1817 -1880はロシア生まれのイギリスの画家、歴史画や風俗画を描いた、この時代には、文字の読み書きができない、あるいは、ちゃんとした文章が書けない人は多かった、右手の女性は、ラブレターを書いてもらっている、花束に添えるのだろうが、花が散っているのはなぜ

 

20 Rudolf Epp : Reading a letter

ルドルフ・エップ1834~1910はドイツの写実の画家、子供や女性を多く描いたが、どの絵も、対象に対する画家の優しい感情が感じられる、仕事をしている女中の絵も多く、これは手紙を読んでいる女中か、何かいい知らせが書かれているらしい、「色よい返事なのかな?」と画家は尋ねている

 

21 Boldini : Morning letter 1884

朝のベッドのまま、上流階級の女性だろう、モーニング・レターというのは、毎朝書く挨拶のようなものか、体を半分起こしたままだが動性があり、まるで相手に向き合っているかのように生き生きとした表情で、何を書こうか思案している、活動的で積極的な女性なのだろう

 

22 Eugenio de Blaas : Love letter 1904

エウジェニオ・デ・ブラース1843~1931はイタリアの画家、ヴェネチアの人々を多く描いた、この絵は上流階級の家の若い使用人たちと思われるが、仲よしなのだろう、一人のラブレターを皆で批評し合っている、身を乗り出す姿勢、手の動きがいい、皆とても生き生きしている

 

23 Giacomo Grosso :

ジャコモ・グロッソ1860~1938はイタリアの画家、肖像画家として名高い人、手紙の絵は、その人のそのときの感情が大きく表れている、この絵は若い女性だが、非常に険しい表情をしており、驚いたのだろう、体も少し固まっている、手紙の内容が不本意なことがよく分る

 

24 Picasso : 手紙の返事 オルガ 1923

オルガ・コクラヴァ1891~1955はピカソの最初の妻で、ロシア貴族の血をひくバレー・ダンサー、1918年にピカソと結婚、しかしピカソは27年にマリー・テレーズと恋仲になり、オルガは35年に家を出る、この絵はまだ23年だが、オルガの表情はどこか悲しそう

 

25 Anna Paik : The Letter

アンナ・パイクは韓国生まれのイギリスの画家、この絵は20世紀の終りくらいだと思われるが、描かれた女性が、手紙を見詰める視線も含めて、堂々としていて弱弱しくない、昨日のピカソが描いたオルガとは非常に違う

 

26 Pieter Bruegel : The Wedding Dance in the open air 1566

「踊り」は絵画の重要テーマ、ルネサンス頃までは半分神話的な場面だったが、オランダのブリューゲルは農民や子供をたくさん描き、彼らの生活が生き生きと活写されている、皆嬉しそうではないか、踊りは、人間の姿勢、体勢、動性だけで喜びの感情を全面的に表現できる

 

27 Rubens : イタリアの村人たちのダンス 1636

人々の動きがいい、昨日のブリューゲルの絵と比べると、人々が楽しさそうなのは同じだが、服装が南国的で肌の露出が多い、女性たちはルーベンス特有のふくよかな肉体だ、画家の最晩年の作品だが、スペインのフィリペ四世が絵を買い取り、今はプラド美術館

 

28 Ferdinand du Puigaudeau : 夜のカーニヴァル1895

フェルディナン・ドゥ・ピゴドー1864~1930はフランスの画家、ゴーギャンと親交があった、ブルターニュの絵をたくさん描いたが、ゆらめく蝋燭など光の使い方が独特、この絵もカーニヴァルの丸いテントから光が広がり、女性たちの帽子が薄青く光っているのが美しい

 

29 Munch : Dance of Life 1900

ムンクらしい絵で、タイトルは「人生のダンス」、左右の二人の女性はパートナーがいないようで、悲しげに立っている、右後方の白服の女性がそれを楽しそうな表情で見ている、ダンスパーティでは必ず勝ち組/負け組が生じるのか、なるほど「人生のダンス」は残酷だ、中央の二人も何だか楽しそうではない

 

30 Anders Zorn : Midsummer dance 1897

アンデシュ・ソーン1860~1920はスウェーデンの画家、この絵はダーラナ県での伝統的な「夏至祭り」を描いたもの、北欧の国々では夏至の日は特に意義深い、農園主は農民や使用人たちをたくさん招待して、ごちそうをふるまう、夜遅くまで明るいから皆嬉しそうに踊る、年に一度の貴重な機会、人々の「今日は踊らなきゃ!」という感じがよくでている

 

31 アレクサンダー・ミラー : ジャックのためのジグ[軽快な踊り]

アレクサンダー・ミラー1960~は現代イギリスの画家、スコットランドの西海岸の小さな村で生まれ育った、独学で画家になったらしい、この絵もおそらく故郷の西海岸で、こんなダンスが踊られていたのだろう、ミラーは、ずんぐりむっくりした体形の労働者をよく描く