[今日の絵 12月前半]

[今日の絵 12月前半]

1 森本草介 : 若いヌード(習作) 2009

ルネサンス以降の西洋画では女性のヌード絵は多数描かれているが、体勢はさまざまで、後ろ姿も多い、もっとも美しい女性画を描く一人である森本草介1937-2015にも多数の後ろ姿がある、滑らかさと曲線性のある背中が表情を持ち、それが気品を生み出している

 

2 Velazquez : 鏡のヴィーナス 1650

この絵では、鏡の中のヴィーナスの顔は少しも美しくない、それに対して後ろ姿は美しく、無造作に投げ出した足から、細い右腕にいたる、上半身の優美なカーブが、お尻で力感的にバランス、調和している

 

3 Ingres : グランド・オダリスク1814

アングルの代表作の一つ、背骨が長いが、無造作に投げ出した足先、絶妙な斜めの角度に流れる体全体の線形性と、右側の上下に流れるカーテンの線、屹立した顔との対比、青色と肌色のコントラスト。神々しい美しさだがヴィーナスではなくオダリスク(トルコ宮廷の女)

 

4 Ingres : ヴァルパンソンの浴女 1808

昨日のアングル「オダリスク」と並ぶ裸婦の傑作、「オダリスク」のように上半身が細くなく、だいぶ違う。肉のふくらみ、丸み、厚みなど、からだ全体のふくよかな女性がアングルの好みらしいが、ルーベンスルノアール等でも痩せた女性美(ツイッギーのような)は描かれない

 

5 Renoir : 髪を結う浴女 1885

この絵は、昨日のアングルの「浴女」を意識して描かれたといわれている、ルノワールの裸婦像としては最も明瞭な輪郭線がある、そして影と光の当たっている肌とのコントラストが明確で、肌の明るさが浴女の肉体を美しいものにしている

 

6 Emmanuel Benner : Lying Nude 1891

作者1836~96はフランスの画家、裸婦もたくさん描いているが、アングルの影響を感じさせる、白く輝く肌、そして流れるような優美な曲線で女性の肉体が描かれる

 

7 Picasso : BlueNude 1902

ピカソのヌード絵は、身体各部分のユニークな形態の組み合わせに特徴があるが、珍しくこの絵は、各部分が部品のように自己主張しておらず、身体全体が「一つ」として描かれている、ややごつごつしているが非常に美しい

 

8 Mogdiliani : Reclining nude from the back 1917

モディリアーニはヌード画をたくさん描いているが、他の画家とは一味ちがう、形態ゆえか色彩ゆえかは分らないが、肉体に何か清潔な単純さのようなものがあり、玲瓏美とでもいうべきか

 

9 Angelo Morbelli : Seated female nude 1919

アンジョロ・モルベリ1853~1919はイタリアの画家、労働や学校など社会的なテーマの絵が多いが、ヌード画もある、どれも人間の肉体の本質として存在する<力>のようなものが感じられ、この絵も、体勢が非常に美しい

 

10 Serebriakova : Nude 1920

ウクライナ出身のセレブリャコワ1884~1967は自分の娘などのヌード絵やバレリーナを多く描いている、長女タチアナは著名なバレリーナになった、この絵はタチアナではなく画家と親しいバレリーナの誰かだろう、肉体に健康な躍動美があるのは画家の他の絵と同じ

 

11 Margaret Maitland Howard : Female Nude, Seated 1920

作者1898 – 1983は英国の女性画家、考古学研究所の製図技師でもあり、人体を作図した、 この絵は、ほぼ後ろ正面を向いているが、やや前かがみで、背骨は大きく湾曲している、それが背中の表情となり、肉体の内側から力が湧き出すような美しさになる

 

12 Chagall : Nude over Vitebsk 1933

シャガールもヌードをたくさん描いているが、ピカソと同様、どれも身体の各部分が部品のように自己主張している、この絵は珍しく、体全体が「一つの身体」として流暢な線型のまとまりがある