[今日の絵] 10月前半

[今日の絵 10月前半]

1 John Singer Sargent : Portrait of Alice Brisbane Thursby 1897

男性より女性の人物画の方が多いのは、女性は美しいと画家が考えるからだろうか。この絵は、画家サージェントのパトロン的立場の女性を描いた可能性があるが、「凝視する視線、ダイナミックで、自身に満ちた姿勢」と批評家は述べている。

 

2 Fredrick Soulacroix:Afternoon Stroll

フレデリック・スーラクロワ1853~1933はフランス系イタリア人の画家、優美な衣装の女性をたくさん描いた、19世紀の終り頃だろう、上流階級の女性の「午後の散策」、長いスカートの衣服で、左右対称を崩したコントラポストの姿勢が美しい

 

3 Lilla Cabot Perry : Lady in an Evening Dress 1911

ペリー1848~1933はアメリカの画家、英文学者の夫とともに日本にも滞在した、家族などの絵が多いが、女性が凛として美しい、この「イブニングドレスの女性」も、昨日までの二枚と同様、衣服そのものがスラリと背の高い西欧の女性によく似合う

 

4 Gustav Igler

グスタフ・イグラー1842~1908はオーストリアの画家、庶民の家族や子どもの絵をたくさん描いた、この絵は上流階級のお嬢さんと思われるが、姿勢が美しく、帽子、顔、手のバランスが絶妙、そしてちょっと澄ました表情と眼差しが魅力的

 

5 Blanche Paymal-Amoutoux :その他の事実1900頃

ブランシュ・ペイマル・アムルー1860~1910はフランスの女性画家、タイトルからすると、この女性は新聞でまず一番関心事を読み、その後それ以外の記事を漫然と読んでいるのか、少しくずした姿勢から彼女のリラックスした心理状態が分り、全体として優美な雰囲気

 

6 Mabel Alvarez:Arabella with Calla Lillies 1934

メーブル・アルバレス1891-1985はアメリカの女性画家、女性をたくさん描いたが、どれも内省的な深みのある表情をしている、この絵も、上半身の露出部分は多いが、彼女は思索しているのか

 

7 John Michael Carter

カーター1950頃~は現代アメリカの画家、政治家の肖像などで有名、この絵はお茶をいれているが、そのしぐさの美しさを画家は描きたかったのか、お茶をいれるときには、手指、腕、肩、顔の向き、表情が、ちょうどこうなる瞬間がある

 

8 Paul Hedley1947~

ポール・ヘドレイ1947~は現代イギリスの画家、ただ座っているのではない、様々な姿勢の女性を描いている、この絵でも、首から足までと腕とがスッと伸びた直線で、幾何学的だが、体はリラックスしているのが美しい

 

9 Daniel F. Gerhartz

ダニエル・ゲルハルツ1965~は現代アメリカの画家、力づよい存在感のある女性画を描く、この絵の女性は、カップを手にする指、カップを眺める表情、体全体の僅かな傾きなど、全体のしぐさが優美

 

10 Vladimir Volegov

ウラジミール・ヴォレゴフ1957~はロシア出身のスペインの画家、姿勢の美しい女性の絵を描く、この絵も、左上から右下への全体の太い線的な流れに、下向きの表情が調和している

 

11 Damian Lechoszest : Candlelight

ダミアン・レコゼスト1976~は現代ポーランドの画家、少女の絵をたくさん描いており、光の当て方が非常に上手い、この絵は、蝋燭の光を下から照らしているが、光の力は強く、少女の凛とした表情が浮かび上がる

 

12 Michael & Inessa Garmash : Aroma of Morning Coffee 2015

マイケル・ガルマッシュ1969~はウクライナ出身の画家、いつも夫婦二人で絵を描くようだ、首と背の大らかな曲線、肩から腕にかけてすっと流れるような直線、カップに絶妙な距離をおいて「香り」を感じている静かな表情など、女性の何気ないしぐさの美しさ

 

13 Marcos Beccari

マルコス・ベッカーリは、水彩画を得意とする現代ブラジルの画家、人間の脚は、脚が上半身の各部分と作る角度、そして脚の二本が互いに作る角度、そして光も含めた周囲の多様な直線との交叉によって、実に美しい幾何学となる

 

14 Scott Harding

ハーディング1965~はアメリカの画家、身体の構成だけでなく色彩感が優れた人、とりわけ赤系統の色が絶妙、この絵も、服の赤さが、体全体に当っている光を強調するものになっている

 

15 Tony Hinchliffe : 一日を考えながらリラックスする女性2020

ヒンクリフ1975~はイギリスの画家、女性を多く描くが、<黒色>の使い方がとても印象的、この絵も、組んだ脚、手、うつむいた顔が、黒い服とブーツ、コーヒーカップ、そしてこげ茶や白の周囲と呼応し、強く美しい存在感がある

 

16 伊勢田理沙 : ひとやすみ 2023

作者1988~は若手の写実画家、佐賀大学卒、白日会会員、私は10月8日に日本橋三越の個展で初めて知り、この絵を見た。脚、腕、手、視線、スカート、ブラウス、椅子、カーテン、猫などが、左上から右下に流れる幾何学的な美しい空間を形成している