[今日の絵] 4月前半

[今日の絵] 4月前半

1 Pissaro : Spring Morning, Pontoise 1874

今日から、少し「春」の光景を、中央の樹の形がよく、全体の構図と色のバランスがとてもいい、ポントアーズはフランス中央部のヴァル=ドワーズ県にある、朝から人々は働いている

2 Monet : Spring 1886

モネが描くとこうなるよね、という感じ、上方画面の7割くらいを花がボーっと広がっているのが美しい、樹下の女性の一人は本を手にしている

3 Gogh:Fishing in Spring, the Pont de Clichy 1887

パリを流れるセーヌ川クリシー橋近くで、釣りをする人を描いている、ゴッホにしては明るくのどかな感じだ、橋の上にも人がいるのがいい、前年、彼は友人の画家ポール・シニャックとスーラの絵を見て、その影響を受けたといわれる。シニャックと一緒に彼はクリシー橋を何枚も描いている

 

4 Frits Thaulow : フランスの川の風景

フリッツ・タウロウ1847~1906はノルウェーの画家、風景画をたくさん描いた、パリに移ったこともあるが街が肌に合わず田舎の寒村に引っ越した、この絵は人が小さく描かれているが、何よりも川の水面がいい、まるで水が生きているようだ、画家は川が大好きだったのだろう

 

5 William McTaggart : Spring 1864

ウィリアム・マクタガート1835~1910はスコットランドの画家、風景画や海洋画を描いた、タイトルは「春」だが山村なのだろう、まだ緑が濃いわけではない、それでも滑らかな傾斜、左下の池、子どもの身体、羊の群れ、樹木、遠景など構図全体の穏やかな調和が「春」を表現している

 

6 Fernando Fader : 花咲く桃のなかで1915

フェルナンド・フェーダー1882~1935はアルゼンチンの画家、桃の木は日本と同じように見えるが、人の衣装がアルゼンチンだと、全体の印象がずいぶん違う、でもポンチョの青、女性の白、桃のピンクの三者の色調の和が美しい、花に人が半分埋まっている

 

7 Fabio Cipolla : Le Printemps de la vie

ファビオ・チポラ1852-1935はイタリアの画家、生活の中の女性を多く描いている、このタイトルは「人生の春」だが、季節も早春だろう、わずかに見える海など、全体の色の調和がいい、男子たちがからかうような、品定めをするような眼差しで、娘たちを見ている

 

8 谷内六郎 : 雲の音 『週刊新潮』1964年4月20日

谷内六郎1921~81は、小卒後、独学で絵を学び、「週刊新潮」の表紙を描いた、どの絵にも子どもが描かれ、昭和の雰囲気が漂っている、この絵の自註に、「五月晴れの日、・・ジェット機がまっすぐに上昇し、バイオリンのような型の雲の上に弦のような飛行機雲が出た」

 

9 Rembrandt : An old man in an armchair 1650年代

人間は、「考える」とき、とても人間らしい、だから絵画に数多く描かれてきた、このレンブラントの絵は、何かを考えこんでいる老人だが、その表情には深い憂いがある、服装からすると上流の老人なのだろう

 

10 Sebastiano Ricci : Thinking man

セバスチアーノ・リッチ1659~1734は、後期バロック期のイタリアの画家、全体が明るいフレスコ画を描いた、これは「考える男」だが、肉体が際立っている、強靭な知性は強靭な肉体に宿るのだろうか

 

11 Makovsky : Sewer 1861

マコフスキー1839~1915はロシアの画家、この絵は若い時だが、服の感じがスッキリして、あまりロシアという雰囲気を感じないが、ガラス容器を含めた光りが美しい、タイトルは「縫う人」だが、縫うのをやめて考え込んでいる、たぶんお金の不足をあれこれ考えているのだろう

 

12 Gaston La Touche : Boredom 1893

ガストン・ラ・トゥーシュ1854~1913はフランスの画家、ドガ、マネ、ゾラなどと友人だった、屋外の絵が多いがこれは室内、タイトルは「考える女」ではなく「退屈」、絵からそういえるのは、読みさしの本、だらんとした左手、そして顔の表情だろう、眼が虚ろで倦怠感がある

 

13 Gabriele Münter : Sinnende 1917

ガブリエレ・ミュンター1877~1962はドイツの女性画家、前衛絵画を領導した一人で、カンディンスキーの愛人であった時期もある、タイトルは「沈思する女」、目を大きく開けて上を向いている表情は明るく、際立った知性を感じさせる、背景との色や形の組み合わせも絶妙

 

14 Olga Sacharoff : テーブルにもたれる女性 1915

オルガ・サチャロフ1889~1967は、グルジア出身のスペインの女性画家、ドイツで表現主義に、パリでキュビズムに触れた、この絵は、板を組み合わせたような尖がった身体が素晴らしく、思索にふさわしい体勢といえる、色彩のバランスも新鮮だ

 

15 Ang Kiukok : Thinking Man 1979

アン・キウコック1931~2005は中国人移民の子としてフィリピンで生まれた、Kiukokは漢字では「救国」、絵は、シュールレアリズム、キュービズム表現主義の影響を受けた、この絵は、悲しみ、苦しみ、狂気などを表している、怖いくらいシャープな幾何学的肉体

 

16レニー・ヨハネス: Modern Thinking Man

レニー・ヨハネスは南アフリカの現代の画家、ウォーホルやケントリッジの影響を受けたとされる、この絵のmodernは「近代的な」という意味なのか、服装があまり「現代的」には思えないが、「考えている」表情がいい