[今日の絵] 5月前半

[今日の絵] 5月前半

1 Chassériau : Portrait of sister Aline 1835

シャセリオ―1819~56はフランスのロマン主義の画家、この絵は妹のアリーヌ13歳で、画家は16歳、彼の人物画は、体や顔の角度が絶妙で、それによって、当たる光が身体全体の美しい表情を作り出す、この絵は手が特にいい

 

2 Bouguereau : girl with basket

ブグローの絵は、顔が真正面で、視線が鑑賞者をまっすぐ視ているものも多い、立体感のある表情という点で普通は真正面は難しいのだが、この絵は、光の当たる微妙な非対称と、顔のわずかの傾き、瞳のわずかな上向き、そして視線の強さによって、美しい表情を作り出す

 

3 Makovsky : Portrait of a young girl

ロシアのマコフスキー1839~1915は、写実主義ではあるが、ある種の理想主義、ニーチェの芸術の定義である「現存在を肯定し、祝福し、完成する」ところがある。彼は子どもや少女もたくさん描いているが、どれも個人の美を捉えていて名画

 

4 Vladimir Volegov

ウラディミール・ヴォレゴフ1957~はロシア生まれでスペインの画家、女性の画をたくさん描いたが、正面のものはほとんどなく、横からの姿が多い、この絵も遠くを見ている姿勢が美しい

 

5 Sergio Cerchi : Space time

セルジオ・チェルキは現代イタリアのアーティスト、フィレンツェで活動、彼の絵はほぼすべてが長方形や正方形の中に人体が描き込まれる、この絵のタイトルは「空間・時間」、手前のコップを含めて色彩のバランスも素晴らしく、この現代娘は「ここに今」生きているように美しい

 

6 Suchitra Bohsle

スチトラ・ボースルはインド生まれでアメリカで活動する女性アーティスト、この絵では描かれて女性は祈っており、視線はまっすぐ上に向き、拳は力が入っている、おそらく人は祈る時このうえなく美しいから、画家はわざわざ「祈り」を描くのだと思う

 

7 William Oxer : Limitless

ウィリアム・オクサーは現代イギリスのアーティスト、女性の絵で名高い、様々な流派の画風をどん欲に摂取して総合した人なのか、描かれた女性には<目ぢから>があり、官能性が知的に昇華されている、この絵も「無限性」というタイトルが面白い

 

8 ダニエル・ゲアハルツ

作者1965~はアメリカの画家、女性の絵をたくさん描いているが、巧みな質感と、絶妙な身体の角度や動性によって、体が空間に広がってゆく感じがある、この絵も、粗く描かれた手前の肩、質感と動きのある髪、やや下向きの顔のバランスが、彼女の美しさを生み出す、彼は「自分は創造主になったつもりで絵を描く」と言っている

 

9 ファビアン・ペレス : 酒を飲む女

作者1967~はアルゼンチンの画家、世界の有名人の肖像画で名高い、彼の絵には描かれた人物の情熱が表現されている、女性もたくさん描き、酒場の女も多い、「酒を飲む女」は、どこか熱いから美しいのだろう

 

10中山忠彦 : 緋のショール 1984

中山忠彦は女性は衣服姿が一番美しいと考えるので、ヌードは描かない、この絵のタイトルも「緋のショール」と衣服の名である、衣服はすべてヨーロッパで丹念に蒐集した19世紀のもので、モデルはすべて良枝夫人、中山の描く女性は非常に美しい

 

11森本草介 : 窓 2007

作者1937~2015は写実の画家、中山忠彦と並ぶ女性美の二大巨匠、抽象画全盛の若い頃は非常に苦労し、写実に転向した、(彼の言葉)「対象を「美しい」と感じた時、その要素をできるだけ忠実に画面に取り入れたいと思う気持ちが必然的に写実的な表現に向かわせます」

 

12生島浩 : かけひ 2017

生島浩1958~は写実の画家、彼の描く女性はどれも深みのある表情が美しい、視線がまっすぐ鑑賞者を見詰めている絵は非常に少ない、この絵は、頬や首の影が絶妙で、目の横の傷のような影が表情に深みを生んでいる、若い少女なのだが風格がある

 

13 河野桂一郎 :

2022年12月の白日会会員選抜展に展示された、河野桂一郎1966~は写実の画家、彼の描く少女は、顔は斜めでも視線が鑑賞者に向いていることが多い、女優をモデルにしたりはしないが、この少女個人のもつ美しさが深く表現されている、視線の強さも美しさの源泉

 

14 渡抜亮 :

渡抜亮1981~は、写実の若手画家、彼は、人間の体は各部がすべて繋がっていることを重視する、目は足指や背中とも繋がっている、そこに人間の身体が美しい理由がある、この絵は、彼女の眼が手指と繋がっていることをよく示している