[オペラ] モーツアルト《フィガロの結婚》

[オペラ] モーツアルト《フィガロの結婚》 めぐろパーシモンH 2.19

(↑隈研吾による舞台装置、場所はホテルという設定、四幕とも同じだが、変化する照明の下で回転し、光の反射が美しい)

 ひさしぶりの《フィガロ》だが、歌のあまりの美しさに、何度も涙が溢れた。特に伯爵夫人の森麻季は本当に素晴らしかった。彼女は55歳で、声量はそれほどないのだが、装飾音も織り込みながら、これほど繊細に歌う伯爵夫人は珍しい。あたかも蝋燭の炎がかすかに震えているような。彼女は、第四幕では、服を取り換えたスザンナが歌うのに合わせて口をパクパクさせるだけだが、まるで二人がデュエットで歌っているように見える。文楽の人形で経験するのと同じで、そこに音が存在するかのように聞こえる=見える。第三幕「そよ風のデュエット」など、モーツアルトでは、概してアリアよりも重唱の方がより美しく、それも口パクから幻の声が聞こえる理由かもしれない。よく省略される第四幕マルチェリーナのアリア、こんなに美しい歌だったのか! 私はこの50年間《フィガロ》の実演を80回以上観ているが、マルチェリーナのアリアに涙したのは、これが初めてかも。そして、衣装もしゃれていてよかった。場所の設定を伯爵邸からホテルに変えたので、人の動きが軽やかで、従業員の制服という設定が可能になったからかもしれない。本当に本当に美しい《フィガロ》、モーツァルトよ、歌手の皆さん、ありがとう!

(↑第3幕、花を持つ「農家の娘」たち。練習風景だから服は違うが、この笑顔がいい)