ラモー『レ・パラダン』

charis2006-11-07

[オペラ] ラモー『レ・パラダン(遍歴騎士)』 パリ・シャトレ座公演 渋谷・オーチャドホール


(写真右は、ヒロインのアルジと遍歴騎士アティス。写真下は、CG画面の人物像と、実物のダンサーとが「混在して」踊る場面。)



バロック・オペラの実演を初めて観た。フランスで人気を博したこの公演は、ハイテクを駆使してCG画像を舞台一杯に映し出し、その画像(動物や人間)と、多数のコンテンポラリー・ダンサーが「一緒に踊る」中に、歌手が混じって歌うという新演出。それでいて、音楽は古楽専門のオケ。指揮は、古楽で有名なW・クリスティ、演出と振り付けは、コンテンポラリーダンスの旗手、J・モンタルヴォとD・エルヴュ。躍動的な舞台は、視覚的な美しさに溢れている。


物語は、城に幽閉されたヒロインを遍歴騎士が救出するという単純な筋だが、今回、CDではよく分からなかったラモーの音楽が少し分かった。ラモーは、起承転結のある音楽とは違って、爽快な感じの似たような舞曲が繰り返されるが、その間じゅう舞台ではダンスが踊られているのだ! オペラとは言っても、歌手が歌う時間よりもさらに長い時間、オケが鳴って踊りが続く。1760年の上演では、7人のソロ歌手の他に、38人のダンサーが踊ったという記録があるそうだ。要するに、オペラというよりダンスなのだ。


今回はそれに、CGの大画面を混在させる。実在のダンサーや歌手が、まさに自分の映像と並んで踊る。見ているうちにどちらがどちらだか分からなくなる「主体の複数化」の演出が斬新だ。ダンサーのうち、男性一人と女性二人は完全なヌードだが、衣服のダンサーほど身体を動かさず、ポーズを取って彫刻のように静止する姿がとても美しい。(写真下は、ソプラノ歌手のすぐ後ろに立つ女性ダンサー。そして最後の大団円で踊るダンサーたち。一番上のヌードダンサーは映像、下二段は実物。)

CG映像と現代的な踊りの迫力に驚いたが、これは案外、華やかな舞台に国王の権力を誇示しようとしたフランス・バロック・オペラの真髄に近いのかもしれない。


以下で5分間の動画が楽しめます。↓
http://blog.eplus.co.jp/mv_theatrix/0605_009