[オペラ] ヘンデル《シッラ》

[オペラ] ヘンデル《シッラ》神奈川県立音楽堂 10月30日

(写真↓は、出演者と舞台、ピーター・ブルックを思わせる、枠と棒のみの現代アート風の簡素な舞台装置だが、終幕、天井から二本の布が垂れて、空中をダンサーが舞うという、彌勒忠史演出が素晴らしい、演奏のビオンティ指揮の古楽アンサンブル「エウローパ・ガランティ」は音が鮮明で豊か)

《シッラ》は、ヘンデルが28歳の1713年に作曲されたが上演されぬまま、現代でもほとんど知られていない作品。そもそもヨーロッパでもほとんど上演されないのに、日本初演とは凄い。2時間で短いが、ヘンデルのオペラの魅力が全開している。男性は、夢に現れる「神様」のバリトン一人だけで、あとは独裁者の英雄などすべての男役を女性が歌うから、まったく宝塚的だ。ヘンデルのオペラはほとんどが宝塚的なのだが、劇中では、英雄や武将も戦うのではなく恋愛しかしないから、そうなるのだろう。ヘンデルのオペラは娯楽性がたっぷりな上に、政治的批評性があるというのも凄い。本作では、シッラは古代ローマの暴君スッラに擬しているが、実は当時のイギリスのマールバラ公爵とイメージが重なり、シッラの妻メテッラは公爵の妻サラと重ね合わされて、それを当時の聴衆が楽しんだという。ヘンデルは王党派に受ける作品も、反王統派に受ける作品も両方書いているそうで、本当にすごい作曲家だ。(写真↓は、反シッラ派の武将クラウディオとその恋人チェリア、そしてローマ護民官レピドとシッラの妻メテッラ、全員女性だが、クラウディオを歌ったコントラルトのヒラリー・サマーズは長背でまるで男性のよう)

今回、日本初演ということで、衣装(友好まり子)は歌舞伎をまねた日本風になっている。最初は違和感を感じたが、劇の内容からすると、これでよかったのだと思う。歌手では、シッラの妻メテッラを歌った韓国人スンへ・イムと、護民官レピドを歌ったアメリカ人ヴィヴィカ・ジュノーが特によかった。

 

2019年ヨーロッパでの舞台ですが、第1幕と終幕のアリアが映像で

Aria Haendel "Dolce nume de`mortali" - Europa Galante - YouTube

Händel Silla finale - YouTube