METライブ ヴェルディ『ルイザ・ミラー』

charis2018-05-21

[オペラ] ヴェルディ『ルイザ・ミラー』 METライブ(4月14日) 銀座・東劇 5月21日


(写真右は、左からルイザ[ヨンチェヴァ]、父ミラー[ドミンゴ]、恋人のロドルフォ[ベチャワ]、写真下は、舞台、チロルの寒村で、舞台装置も衣装も歴史を踏まえている。)


F.シラーが25歳のときに書いた戯曲『たくらみと恋』をヴェルディがオペラ化したもの。身分違いの恋人たちの結婚が妨害され、二人が死んでしまう悲劇で、それぞれの娘と息子の死によって二人の父親が残されるという点では『ロミオとジュリエット』に似ているし(写真下↓)、偽手紙に騙されたとはいえ、恋人ルイザが心変わりしたと疑って殺そうとするところは、『オセロ』に似ている。最初から最後までテンションが高く、緩急でいえば緩がなくて急ばかりの作品だ。オペラとしてはきわめて演劇的で、ヴルムや伯爵のような悪人がいて陰謀をめぐらし、その陰謀が着々と進行して、最後、善人の若い恋人たちが死に至るのは、『オセロ』のように、筋の展開そのものが辛い。『たくらみと恋』を演劇で見たときには気が付かなかったが、この作品は父ミラーと娘ルイザの「父娘愛」が大きな柱になっており、『リゴレット』などとも共通する(写真下↓)。ヴェルディは「父娘愛」が主題として好きだったのかもしれない。


それにしてもヴェルディは、休むことなく、どの場面にも凄い音楽を付けている。登場人物たちは、愛の葛藤に苦しみ、激しくもがき、神に祈り、神を呪うので、その感情はあまりにも強く、ヴェルディの重厚な音楽が激しく高鳴って、こちらが受け止められないほど圧倒される。崇高さが感じられる音楽でもある。色々と音楽的な実験もなされており、楽器がまったく鳴らないアカペラの四重唱は、ヨンチェバが言うように、「全体が宙に浮いている」ような不思議な感じがするし、珍しいバスだけの二重唱(下に動画が↓)も味わい深い。とにかく、今回の舞台は歌手がすべて凄い、77歳のドミンゴも含めて、全体の息が合っているというか、歌唱の「厚味」が素晴らしい。悪役の伯爵(ヴィノグラドフ)とその部下ヴルム(ベロセルスキー)はバスだが、二人のテノールとの組み合わせ(バリトンはいない)の歌唱は、重く悲劇的な感情を見事に表出している。演出はE.モシンスキー、指揮はド・ビリー。あと、METライブは、幕間の歌手インタヴューがとてもよい。ドミンゴはこう語った、「私は音楽をやって食べていけるという非常に恵まれた立場にあることをとても感謝している。だから、たとえ歌えなくなっても指揮など音楽は続ける。死ぬまで引退しない。」

よい動画がありました。
ヴルムがルイザに偽手紙を書かせるシーン(2分半)
https://www.youtube.com/watch?v=O-uJReRKpbA

伯爵とヴルムのバス二重唱(1分半)
https://www.youtube.com/watch?v=T3d3b8-VnZ4