[オペラ] ヘンデル《デイダミーア》二期会

[オペラ] ヘンデル《デイダミーア》二期会 目黒パーシモンホール 5.26

(写真は舞台、中村蓉演出・振付で、バロックダンスの代りに全篇コンテンポラリーダンス、下は美少年のアキレウス)

二期会公演、鈴木秀美指揮。珍しい作品が上演された。ヘンデルの最後のオペラ。宝塚的なヘンデルオペラの中でも、トランス・ジェンダーが入り組んだ本作は、物語がすばらしい。ただし、音楽がやや平板で変化に乏しい。地味なアリアはあるのだが、絶唱というべき美しいアリアは一つもない。美しいデュエットもなく、全体が、テンポの速いレチタティーボか合唱のように進行する。コンテンポラリーダンスを全篇に取り入れたのは正解で、もしこれがなければ、退屈なオペラになっただろう。さらに、もしこの物語のままで、モーツアルトが作曲したら、すばらしいオペラになったのに、と思う。

(写真↓はデイダミーア姫(左)とアキレウス(右)、アキレウスは女装して少女ピッラになっているときはスカートを着けているが、最後に少年に返りトロイアに出陣する)

誰が考えた台本なのか分からないが、物語は素晴らしい。トランスジェンダーの面白さが全開だ。ヘンデルの初演時、アキレウスカストラートではなく十代のソプラノが歌った。アキレウスはキャラが『フィガロの結婚』のケルビーノのようで、楽しい。英雄オデュッセウスもソプラノ歌手で、「少女ピッラ」が本当は少年アキレウスであることを知りながら、気づかないふりをしてピッラに求愛するシーンはとてもよかった。知将オデュッセウスアキレウスをトロイ戦争に連れ戻そうとする場面のパロディなのだ。さらにアキレウスが扮する少女ピッラは「鹿を追う」ので、おそらくキャラ的に女神アルテミスも重ねられている。(写真↓、左から二人目の黒服がオデュッセウス、スラリ長身の宝塚的な美男子だったら、さらによかったが、このオデュッセウスはやや地味系)

歌手たちは二期会の若手。作品そのものに、いい歌があまりないので、歌手として輝く場面がないが、よく頑張ったと思う。

外国の上演の短い動画が、やはりダンスは工夫している

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