[演劇] 唐十郎『唐版・犬狼都市』

[演劇] 唐十郎『唐版・犬狼都市』 梁山泊公演 下北沢・紫テント   11月21日

(写真下は、紫テントの内側から見える下北沢(私の生まれ育った町)、中央高い所が下北沢駅、上演中も換気は十分なので8時過ぎには座席は寒くなってきた)

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唐十郎を見るのは『秘密の花園』『少女仮面』に次いで三つ目だが、『犬狼都市』はいかにも“アングラ劇”らしい熱気に満ちている。テントも満席で、熱気ムンムン。唐の演劇は、どうしようもなく猥雑で、怪しい雰囲気とチープな感じがいいのだから、やはりテントが似合う。1979年の初演も新宿西口公園の紅テントだったし、芝居小屋向きで、高級劇場にはそぐわないのだ。今回は、もと状況劇場にいた金守珍が創設した新宿梁山泊の公演で、紫テントというわけ。俳優は、演出を兼ねる金と、水嶋カンナの他は新人が多い。原作は澁澤龍彦の小説で、「都市の汚物がしみ込んだ地下の世界」(金守珍)。さらに元のネタは、エジプト神話か何かの、犬狼族と魚族の戦いという物語。「ファラダ」という犬を人間の男女が追跡するのだが、人間も犬のようになって地べたをクンクン嗅ぎまわる。架空の地下鉄駅が舞台で、そこから地下に繋がっている。犬のおかげで、駅がある東京「大田区」が「犬田区」になってしまう荒唐無稽な話だが、私は1962~64と2年半、大田区に住んでいたので、蒲田駅大森駅周辺の街のあの何となく汚いチープな感じをよく覚えており、この舞台の「犬田区」はそんなところなのかも。狂犬がまだ街にいるので、管理する保健所の職員の田口呆(宮原奨伍)と、彼の恋人でバーの女(?)のメッキー(水嶋カンナ)が主人公(写真下↓)で、この二人はとてもよかった。他もすべて怪しい人物だが、ムンムンした熱気が舞台に横溢している。劇はミュージカル仕立てで、歌、音楽、踊りがいかにも昭和風。奥山ばらばの踊りがすごくよかった。『少女仮面』がそうだったように、唐の演劇は、どうしようもなく猥雑で下品でチープなものの中から最後にスーッと清らかな美が立ち現れるのがいい。本作も、終幕直前に、犬に嚙まれて血まみれになったけれど、若い二人の純愛がとても美しく輝いた。

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練習版ですが、動画が。

https://twitter.com/SRyozanpaku/status/1324540089683173378