[今日の絵6] 4月前半
4.1 Jan van Eyck : Self Portrait, 1433
ファン・エイク(c.1395~1441)は初期フランドル派の画家で、15世紀ヨーロッパで最も重要な画家の一人。テンペラ技法から油絵技法への転換を果たし、絵画の表現力を飛躍的に高めた。この絵は彼の自画像とされ、頭に捲いたターバンの深みのある赤色が印象的
2 Pietro Perugino : Self Portrait, 1496
ペルジーノ(1448頃~1523)はラファエロの師だが、多くの画家の自画像に感じられる「眼の強さ」がある、オレンジ色の帽子も全体の色調を効果的にしている、彼は多くの弟子をとって工房を運営した、この絵は「工房のオヤジ」といったところか
3 Dürer : Self Portrait, 1493
22歳のデューラー(1471~1528)、イタリア旅行の前年の絵、少し前までの有名画家の自画像は、重要な行事の参列者の一人に自分を紛れ込ませる「参列型」が多かったが、デューラーは独立した自画像を描いた、彼は自己の容姿に自信を持っていたらしいが、若々しく美しい
4 Tiziano : 1512 自画像?
自画像とも初期のパトロンの肖像ともいわれている、その眼力(めぢから)が凄い、自画像に真正面が少ないのは立体感が出しにくいからか、この絵は手前にぐっと突き出した大きな肩と腕、ジロリとこちらを睨む視線など、身体の三次元的奥行が印象的
5 Hans Holbein : Self Portrait, c.1542
ホルバインの描く人物は、どれも堂々とした顔をしている、この絵は死の1年前で、不遇な時期のホルバイン、ヘンリー8世から宮廷画家の身分を剥奪された。でも強い顔をしており、顔はやや横向きだが右眼は鑑賞者に向けられている
6 Rembrandt : Self Portrait, c.1628
レンブラント(1606~69)は、ドローイングも含めて生涯に約100枚の自画像を描いた。画家は依頼された絵を描いて売ったから、有名になる以前の売れない自画像は、自分の研究の為に描いたのか(モデル代も不要)。22歳の彼は若々しく、乏しい光の中から人間が浮かび上がる
7 森本草介:光の方へ、2004
森本草介(1938~2015)は戦後日本の写実絵画の領導者の一人、彼の描く女性は優美な中にも凛とした気品がただよう、後ろ姿の画も多く、女性の後ろ姿の美しさという点で、彼以上の日本人画家はいないのではないか、この絵も代表作の一つ
8 島村信之 : コントラポストⅠ、2011
島村1965~によれば、人間の最も美しく見える姿が「コントラポスト」といわれる、片方の足を少し前に出して重心を傾けるポーズ、ミロのヴィーナスはじめギリシア時代からこのポーズの女性像が描かれた、本作にはボッティチェリのヴィーナスを参考にしたという
9 永山優子 : Man is __ , 2010
永山1975~は写実の画家で、野田弘志に師事し、北海道伊達市で制作活動をする人、この絵は描くのに約2年間を要した、「人間の皮膚は透明感があるが、弱々しく透けて見えるのではなく、腕なら腕、足なら足の物質としての存在感は壁にもまさるものがある」と永山は言う
10 松永瑠利子 : 寝室、2019
松永1990~は若手の写実画家、私は2020年10月23日にホキ美術館でこの絵を見た、女性のヌード画の多くは、滑らかな白い肌が描かれているが、この絵は違う、アスリートのように日焼けして黒光りし、体毛も多いが、野性的な存在感が美しい、私は一瞬、山野をかけ廻るアルテミスを思った
11 Jean-Baptiste Regnault :アキレウスを教えるケイロン、1782
ギリシア神話だが、人の動性がいい、手足もまた弓のように張っている、ルニョーはフランスのアカデミーを確立した新古典派画家、全体の構図に幾何学的な端正さがある
12 Cornelis van Haarlem : 修道女と修道士 1591
修道士や修道女にも、恋愛する人がいたのだろう、だからこういう絵が描かれる、二人は罪におののき、思いつめているのか、でも、こういう絵は教会から睨まれただろう、コルネリス・ファン・ハーレム(1562~1638)はオランダの画家
13 Jan Steen : Baker Ostwaert and his wife, 1658
ヤン・ステーン(1626~79)はオランダの画家。自分で居酒屋も経営していて、庶民を観察し、その生活を生き生きと描いた。この絵も、焼き上がったパンを持っている若い主人の嬉しそうな表情がいい、右の子どもは画家の息子、画家はパン屋夫妻の友人なのだろう
14 Degas : La bouderie(ふくれっつら), 1869
ドガ(1834~1917)は「踊り子」の絵が名高いが、ドガの描く人間はつねに何か行為をしており、人物のその動性や表情が彼の絵の魅力である、ただ座って前方を向く人物画はあまりない、この絵は夫婦だろうか、金貸しだろうか、二人とも「ふくれっ面」をしてそっぽを向いている
15 Giovanni Boldini : Moving to the Bois de Boulogene,1909
ボルディー二の絵もドガと同様、人物の動性が素晴らしい、ブーローニュの森へ行こうとする社交界の淑女と紳士、デートなのだろうか、体の動きも表情も生き生きしている