今日の絵(16) 9月後半

今日の絵(16) 9月後半

 

18 ジェンティレスキ : 自画像

しばらく若桑みどり『女性画家列伝』により、自画像を、アルテミジア・ジェンティレスキ1593~1652は、ヨーロッパで一流画家として活躍した初めての女性、父も画家だが、「当時としては異例な闘争的な」女性だったといわれる、自信に満ちた表情が素晴らしい

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19 カウフマン : 自画像

アンゲリカ・カウフマン1741~1807は、スイス出身、父は二流の画家だったが、一家でローマに移住し、アンゲリカはローマ随一の人気画家で名士になった、彼女の崇拝者やパトロンは多く、ヴィンケルマンや若きゲーテも彼女のアトリエを訪れた、四カ国語を操り歌も玄人はだしの才女

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20 エリザベート・ヴィジェ・ルブラン : 自画像

彼女1755~1842は、若くしてマリー・アントワネット付き肖像画家になり20枚以上も彼女を描き、宮廷の美女たちをたくさん描いた、この自画像は18歳頃で、彼女自身も非常な美人、若桑みどりによれば、この時代、本人が美人でなければ女性画家として成功できなかった

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21 シュザンヌ・ヴァラドン : 自画像(パステル画)、1883

彼女1867~1938は画家ユトリロの母で、彼女自身も画家だった、肖像画というのは「眼」が一番むずかしい、眼は当人の内面を表しているからだ、他人の眼ではなく自分の眼を描く自画像では、画家はみな慎重に考えながら自分の眼を描いたはずだ

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22 ケーテ・コルヴィッツ : 自画像

彼女1867~1945はドイツのプロレタリア芸術家、版画が多いが、労働者階級の人々の働く姿を描き、特にそのたくましい手を強調した、魯迅がその版画を引用したり、日本でも宮本百合子が彼女を紹介した、これは珍しい自画像だが、強い意志を持つ女性であることが分る

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23 ナタリア・ゴンチャロワ : 自画像 1907

彼女1881~1962はロシアに生まれ、パリでキュズムなど前衛絵画の影響を受けた(この絵の色彩などに感じられる)、やがてロシアの伝統である民衆芸術を画風に採り入れた、生涯にわたってロシアバレエ団のディアギレフと共同作業をし、バレエ団のポスターもたくさん描いた

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24 レオノール・フィニ : サソリを持つ自画像 1938

彼女1907~1996はイタリア生まれ、シュールリアリズム系で、暗黒の中に特異な女性像を描いた、「過去に多く描かれた女たちのように即自的に性的であるか、無実な被害者を装うのではなく、悪意ある<性>の当事者であることを表明」(若桑みどり)、自画像にもサソリが

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25 河野桂一郎 : はじまり 2021

今年3月27日に白日会展でこの絵を見た、内閣総理大臣賞受賞作、描かれているのは画家の娘だろうか、この少女が「今ここ」にそのまま「いる」という感じ、画家を信じ切ってまっすぐに見詰める眼差しが、モデルであることを超えて、普通の自然な少女の目になっている

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26 中山忠彦 : 楽興 1995

中山の自註、「私は結婚してから50年間にわたって、妻をモデルにして女性像を描いてきました。・・それは女性美を描くにあたって、妻という一人の女性を窓口にして、普遍的な女性美を探ろうとしてきたからなのです。そのための方法として、女性が最も美しく装われた、19世紀のフランスの著名なデザイナーによって制作されたドレスを利用しています。なぜなら、一人の女性が衣装によって精神的作用を受け、変化する様子が見えてくるからです」

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27 藤田貴也 : Rina 2015

五か月要した大作、藤田は「人物が描かれた作品なら、誰がとか、性別とか、年齢とか、そういうものではなく<ヒトがそこにいる>と感じてもらいたい、そう感じる作品を作りたい」とも書いた、「そこにいる」という存在が「再現」されていること、これが人物画の究極の真理だろう

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28 松永瑠璃子 : untitled 2018

松永1990~は野田弘志に師事した若手の写実画家、この絵はタイトルにはないが自画像と思われる、人物画とは、「ヒトがそこにいる」という存在そのものを再現するものであるならば、この絵は優れた人物画だ、横から描いた眼にも視線の力がある

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29 綿抜亮 : 2011

綿抜1981~は若手の写実画家、九州産業大学芸術学部専任講師、綿貫は少女をたくさん描いているが、どの絵も強く惹き付けられる、美しい少女すなわち美少女を描いているのではなく、少女という存在そのものの美しさが表現されているからだろう

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30 本木ひかり :

本木1986~は写実の若手画家、ちょうど一年前にホキ美術館で、「第3回ホキ美術館大賞展」に出品されている絵を初めて見た、この絵ではないが、肉体の質感が見事に描かれていた、この絵も、強い視線が印象的で、肉体の逞しい美しさを感じる

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