[今日の絵] 6月前半

[今日の絵] 6月前半

1 Anthony van Dyck : Self-Portrait, ca.1620

ヴァン・ダイク1599~1641はバロック期のフランドルの画家、1620年にイギリスに滞在しジェームズⅠ世を描くなど宮廷画家として卓越していた、この瑞々しい自画像もその頃だが、彼はまだ20~21歳、自分を上品な貴族のように描いている

 

2 William Turner : Self-Portrait, 1799

ターナー1775~1851は英国の画家、風景画が多いが、これは23~4歳の時の自画像で、若々しく精悍、こちらを正面から見据える眼が印象的だが、この絵は実際より美男子に描かれたと悪口を言われた、光と影の対比的強調は彼の風景画と共通するロマン主義的な手法か

 

3 Konstantin Makovsky : Self-Portrait, 1856

マコフスキー1839~1915はロシアの画家、12歳でモスクワ絵画彫刻建築学校に入学し、あらゆる賞を受賞する最優秀学生だった、これは17歳だが、いかにも自信たっぷりの自画像、眼が鋭いが澄んでいる

 

4 Gauguin : Self Portrait, 1896

ゴーギャン1848~1903は、1895年9月から二度目のタヒチ滞在期に入り、その後フランスには帰らなかった、1896年はほとんど絵を描かなかった年といわれる、この自画像は横顔で、彼はまだ48歳だが、どこか疲れがみえる

 

5 Schiele : self-portrait aged 16, 1906

エゴン・シーレ1890~1918の描く人間の肉体には、他の画家にない美しさがある、それはおそらく、人間の肉体のもつ繊細な弱さ、傷つきやすさvulnerability、壊れやすさfragilityのようなものが描かれているからではないか、この16歳の自画像にも私はそれを感じる

 

6 Chagall : 横顔の自画像 1914

マルク・シャガール1887~1985には自画像が何枚もあるが、これは珍しい、自分をメルヒェンの登場人物のように描いている、ただ、他のリアルな自画像と比べてみても、目がやや奇妙であるという点は変っていない、この絵も、目が閉じているようにも少し薄目のようにも見える

 

7 Cornelis de Vos : Portrait of a Young Woman

コルネリス・ド・フォス1584~1651はベルギーの画家、画商でもあり、ルーベンスの盟友だった、家族や子どもの肖像画で名高く、この絵は1630年代半ばで、代表作の一つ、全体に柔らかく、温かみがあり、この女性のおっとりした性格がよく描けている

 

8 Adam de Coster : 灯した蝋燭の手前に糸巻き車をもつ若い女

アダム・デ・コスター1586–1643はベルギーの画家でアントワープで活躍、若い時イタリアに行き、カラヴァッジオの影響を受けたといわれる、半身像に劇的な光の効果を描いている、この女性は服装からして召使と思われるが、独特の美しさがある

 

9 Marstrand : a woman on her way to carnival

ヴィルヘルム・マーストラン1810~73はデンマークの画家、庶民の日常を描いた、この絵はカーニバルに出かけるお嬢さん、左で待つのは彼氏か、カーニバルは、上流階級の舞踏会と同様、庶民の重要な社交の場だったのだろう、母や妹?も「さあ頑張ってね」と応援している

 

10 Manet : 休息するベルト・モリゾ 1870

ベルト・モリゾはマネの義妹、彼女も画家で、この絵では29歳、姿勢を少し崩して身体全体がゆったり広がる感じが美しい、白いスカートが左側だけに大きく延び、上半身の微妙な傾きとソファーへのわずかな沈み、見えている片足、極細のベルトと首回りと髪の少量の黒など、白の見事な調和

 

11 Degas : 病気の回復期 1868~73

いつもすぐ発表されるドガの他の肖像画と違って、この絵は15年間アトリエで眠っていた、ドガの人物画はどれも身体のその時点の特徴が鋭く表現されている、本作も、ベッドから起きられるようになったばかりで、まだ治り切っていない女性の特徴が、正確に描かれている

 

12 Renoir : By the Seashore, 1883

この絵は実景ではなく、アトリエでモデルを藤椅子に座らせ、別に描いた背景は1881~2年のルノワールのイタリア旅行の反映といわれる、もし室外の実景ならモデルがこのように端正な姿勢ではいられないだろう、背景との遠近感も奇妙で、だからこそモデルが前景に浮かび出る

 

13 Ramon Casas : 舞踏会のあとで1895

ラモン・カザス1866〜1932はスペイン、カタルーニャの画家、上流階級の肖像画、風刺画などを描いた、この絵も上流階級のお嬢さんか、舞踏会から帰って「疲れちゃったわ」とソファーで横に、人目のないところでリラックスすると、ちょっとお行儀が悪くなってしまう

 

14 Boldini : Portrait of Gladys Deacon, 1908

グラディス・ディーコン1881~1977はフランス系アメリカ人の貴族で社交界の名士、この絵では27歳、ボルディーニの描く人物はすべて動性があり、崩した両足、ソファーに深く沈み込んで左に傾く上半身、もの憂げな表情など、まさにこの時の彼女が生き生きと描かれる