[今日の絵] 12月前半

[今日の絵] 12月前半

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1 Jordaens : 結婚した若いカップルの肖像 1620

ヤーコブ・ヨルダーンス(1593~1678)はフランドルの画家、ルーベンスの影響があり、宗教画、歴史画、風俗画などを描いた、どの絵も表情が生き生きとしており、この新婚さんも「いい顔」をしている

 

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2 Degas : エドモンドとテレーズ1866

テレーズはドガの妹、その夫がエドモンド・モルビリ、1863年に結婚した若夫婦、ドガの絵は身体に動性があり、この絵でも夫の姿勢、そして妻がドレスのショールを手にしており、その色が美しい、つまり、ただ座っていても、人は何かをしているように描かれている

 

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3 Renoir : シスレー夫妻の肖像1868

描かれているアルフレッド・シスレー印象派の画家でルノワールの親友、この絵は、公園で仲睦まじい様子のシスレーと妻のマリーとされてきたが、美術史家の考証によると、この絵の女性は実在の妻マリーとあまり似ていない、だからこの絵は、ただ「カップル」とも題される

 

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4 Tissot : 昼食 1868

ジェームズ・ティソ(1836~1902)はフランス人の画家、ハイソサエティの人々を細部まできちんと描いた、敬虔なカトリックだったが、イギリス人女性と大恋愛し同棲、この絵も、裕福そうな恋人たち?の昼食か

 

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5 Manet : アルカションのインテリア1871

アルカションはフランス南西部の海辺の町、一緒に滞在した時、マネの妻と息子を描いたらしい、個人的な絵なので展示されたことはない、やや大まかな描き方の絵だが、母と息子の親密なくつろいだ雰囲気が伝わってくる

 

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6 Matisse : ニースのインテリア 1919

昨日の、マネの「アルカンションのインテリア」1871とどこか似ている、展示されたことのないマネの絵をマティスは知らなかっただろうが、室内を描き、人もいて、遠くに海が見えるという構図は、海辺の街ならよくあっただろう、女性はイタリア人モデルのロレッテか

 

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7 Munch : eye in eye 1894

ムンク(1863~1944)はノルウェーの画家、この絵は初期の作品で、有名な「叫び」1893、「思春期」1894等と同時期、恋人たち?が互いに見つめ合っているが、その表情には喜びが感じられない、不安と不信に満ちて、ひたすら相手を探っているのか

 

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8 Mueller : 恋人たち 1919

オットー・ミュラー(1874~1930)は、ドイツ表現主義の画家、女性を細身のゴシック的肢体で描いたが、この絵の恋人たちも二人とも細身、色彩のバランスが美しく、二人はとても幸せそう

 

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9 Egger-lienz : 男と女1910

アルビン・エッガー=リエンツ(1868~1926)はオーストリア表現主義の画家、農民や労働者や兵士を描いた、この絵のように、彼が描く人物はごつくて逞しいが、優美ではない、ナチスが彼の絵を高く評価したが、画家自身は1926年に死んでいる

 

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10 Picasso : 恋人たち1923

ピカソはバレエ・リュスの創始者であるセルゲイ・ディアギレフと親しく、彼の舞台美術をたくさん手がけた、そのためか演劇のシーンに関連づけられる絵も多い、この「恋人たち」もおそらくは舞台のシーンだろう

 

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11 Rembrandt : ユダヤ人の若い男1648

顔を描く場合、真正面だと三次元性が表現しにくい、この絵も両耳に非対称性があり、顔はわずかに斜めを向いている、そして左目と右目では眼差しにズレがある、このズレと、唇がわずかに開いていることが、この人物の表情のポイントになっている

 

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12 Degas : ある女性の頭部1873

ドガが描く人物には必ず動性があり、顔を描いたこの絵も「横を向く」という動性があるだけではなく、眼は、何かを「見よう」としており、口も、何か「言おう」として今にも言葉が出てきそうな口だ

 

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13 Serov : 自画像1880年

ヴァレンティン・セローフ(1865~1911)はロシアの画家、両親は作曲家、絵は何を描こうとも、そこに画家と対象の関係性が描かれている、絵は私には、(1)自画像、(2)家族の絵、(3)第三者の絵、の順で興味深い、自画像から、画家が自分をどういう人間として認識しているかが分る

 

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14 Picasso : 自画像 1907

1907年には、ピカソ1891~1973の代表作の一つ「アヴィニヨンの娘たち」が描かれたが、この自画像もそれとよく似ている、特に五人の「娘」のうち中央の二人の「娘」の顔とは、大きな鼻、大きな眼の描き方がそっくり、様式の成立とはこのようなことを意味するのだろう

 

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15 Surikov : マリアの頭部 1914

ヴァシリー・スリコフ(1848~1916)は、ロシア帝政末期の画家、トルストイに高く評価された、群衆を描いた歴史画が名高い、この絵は最晩年のもので、やや印象派風ともいえるが、スリコフの他の絵と同様、この女性の強い意志が表現されている

 

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16 Modigliani : 赤い頭部1915

彼の他の絵に比べると荒っぽい描き方に見えるが、署名があるから未完成ではないのだろう、眼に瞳を入れないのは彫刻の影響ともいわれる、この絵は、顔に不穏な感じがあって、怒っているようにも、今にも泣きだしそうな顔にも見える

 

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17 Marie Vorobieff : シャガールの肖像1956

マリー・ボロビエフ(1892~1984)はロシア生れの女性画家、20歳からパリのモンパルナスに住み、たくさんの画家と知り合った、その一人シャガール(1887~1985)とは同世代で二人とも長生き、この絵は二人とも60代だが、彼女は「最初の女性キュビズム画家」と言われた人

 

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18 Magritte : 啓蒙の時代1967

ルネ・マグリット(1898~1967)はベルギー出身の、シュールリアリズムの画家、この絵は死の年に描かれた、事物を現実の文脈から切り離して描くのが特徴で、事物が空中に浮いている絵も多い、この顔の絵の「啓蒙の時代」というタイトルも謎、気球は啓蒙の象徴ではないし