[演劇] シラー『群盗』

[演劇] シラー『群盗』 赤坂レッドシアター 12月18日

(写真は、盗賊団の首領である主人公のカール[フクシノブキ]と、盗賊の仲間たち)

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松森望宏演出、劇団CEDAR公演。私はこの『群盗』を見て、18世紀後半のドイツにおける「シュトルム・ウント・ドラングSturm und Drang」とはどのようなものか理解できた。『若きヴェㇽテル』では、なぜ「Sturm und Drang疾風怒濤?」なのか分らなかった。要するに青年たちの反抗が主題なのだ。『群盗』はシラー18歳の作で、1781年だから、フランス革命の少し前。青年たちが「正義の盗賊団」を結成し、領国を奪おうという革命を目指すが失敗する。それにアベルとカインのような兄弟の争いと、父と息子たちの愛憎が絡む物語。日本の宝塚でも上演されたそうだが、なるほどイケメンの青年たちが大活躍する青春劇でもあり、この上演でも20代半ばのイケメンたちが舞台で格闘する。観客もほとんどが若い女性だった。(写真↓は、カールの弟のフランツ[桧山征翔]と、兄弟が自分の恋人にしようと争う従妹のアマーリア[高崎かなみ]、そして盗賊団)

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原作の戯曲は異様に長いもので、全部上演したら、5時間を超えるだろう。それを130分にうまく短縮した。物語の展開は十分に理解できる。若者たちが盗賊団を結成して国を奪うという話は荒唐無稽に見えるが、兄弟の激しい葛藤と対立は非常にリアリティがある。イケメンの兄カールは、父から溺愛されるが、醜く足に障害のある弟カールは父から憎まれている。最後にフランツは自殺、カールはアマーリエを殺し、自分は自首するという終幕なので、全体は悲劇なのだが、父と息子たちとの愛憎が強く描かれているので、これは家父長制批判なのかもしれない。カールとアマーリエは最初から最後まで相思相愛なのだが、この二人の恋がもう少し前景化されるとよかったのではないかと感じた。

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