[今日の絵] 9月後半

[今日の絵] 9月後半

13 デューラー : メランコリアⅠ 1514

「もの思いに耽る人」は絵画の大きな主題、人は思いに耽るとき、自分に閉じこもり自閉的になり、「瞑想している」ように見える、古来「メランコリー=憂鬱」という名で描かれたのは「もの思いに耽る人」である。この絵で、翼ある若い女性が考えているのは、幾何学天文学かあるいは・・

 

14 ルーカス・クラーナハ : メランコリー 1532

クラーナハのこの絵は、昨日のデューラーメランコリアⅠ」を踏まえているが、象徴的アレゴリーは少ない、前者の女性の表情が、芸術家の創造的瞑想であったのに対して、こちらの女性の表情は明るく、もの思いに耽る暗い影がほとんどない

 

15 Fritz Zuber-Bühler : The Poetess 1880

タイトルは「女性詩人」、彼女は一心に思索=詩作しているのだろう、すぐ横の子供たちの声は耳に入らず、下の子は夫が世話している、ツーバー・ビューラー1822~1896はスイスの画家で、古典主義のスタイルで人物画を描いた

 

16 Hubert Salentin : A Girl in a Church 1874

フーベルト・サレンティン1822~1910はドイツの画家、子どもや女性、家族の絵をたくさん描いた、この絵では教会に少女が一人でいる、皆と一緒ではなく祈っているのでもない、手元にあるのは聖書だろうが、表情はもの思いに耽っている、何を想っているのか

 

17 Renoir : Reflection 1877

タイトルは「熟考、反省」、ルノワールの描く若い女性は、どれもが「明るい」表情とは限らず、どちらかというと「沈んだ」表情の絵もそれなりにある

 

18 Gauguin : Melancholic 1891

タイトルは「メランコリック」、元のタヒチの言葉ではfaaturumaで、ゴーギャンは「心に悩みのある状態」というほどの意味で使ったらしい、なるほどこのタヒチの女性はそう見える

 

19 Edgard Maxence : Jeune femme pensive

タイトルは「もの思いに耽る若い女性」、モデルはトゥルネ・ヴェル・ゴーシュという女性らしい。やや鋭い表情だが、たしかに「もの思いに耽っている」。エーデルワイスの花の飾りがよく合う。エドガー・マクサンス1871-1954はフランスの象徴主義の画家

 

20 Edwin Harris : The pensive gardener

人は戸外で働きながらも「もの思いに耽る」、この絵のタイトルは「もの思いに耽る庭師」、たしかにぼーっとした表情だ、エドウィン・ハリス1855~1906はイギリスの画家、漁村に住み、庶民を描いた

 

21 Edward Hopper : Automat 1927

タイトルは「自動販売方式の食堂」という意味らしい(米国には百年前からあったのか)、女性は自分で機械を操作してコーヒーを入れ、席に運んで飲んでいるのだろう、店員もいないから「もの思いに耽る」にはいい環境だ、孤独な時間を過ごしたい人は、こういう店を利用するのか

 

22 John Michael Carter

「もの思いに耽る」若い女性だが、姿勢、特に足、衣服、床にある茶器などが互いに不調和でアンバランス、人が「もの思いに耽る」とき、必ず何らかの不調和があると画家は考えたのか、この絵はデューラーメランコリアⅠ」ともやや似ているか、ジョン・マイケル・カーター1950~はアメリカの画家、生活の中の普通の女性をたくさん描いた

 

23 Michael Taylor

体勢や床の携帯からして、何か直近の問題を考え込んでいるのだろう、「もの思いに耽る」とき人は、ぼんやりと遠くを見るような表情になるが、それとは微妙に違って、表情はややきつい、マイケル・テイラー1952~は現代イギリスの画家、多様な姿勢の人物画を描く

 

24 ドガ : バレエ教室1879

バレリーナ、ダンサーなど「踊り子」は画家の好む主題だ、身体のさまざまな<体勢>にそれぞれ固有の美しさがあるからだろう、ドガも数多くバレリーナを描いたが、転んだり、疲れて休んでいる姿の絵も多い、この絵も右側の子は、先生に叱られたのか沈んでいる

 

25 Vicente Palmaroli : Ballerina 1880s

このバレリーナは美しいが、何か浮かない表情だ、奥では仲間たちが練習している、順番を待っているのか、ドガの多くの絵と同様、華やかなバレリーナも楽屋では暗いのかも、ビセンテパルマローリ1835-1896はスペインの肖像画家、プラド美術館長も務めた

 

26 Gino Severini : The Dancer 1915

ジーノ・セヴィエリーニ1883-1966はイタリアの画家、未来派キュビズムの影響が大きい、この絵は明らかに踊っているダンサーの美しい体勢を描いている、踊ると身体の周りの空気も色を纏うかのよう

 

27 Serebriakova : Ballerinas in the dressing room 1923

ウクライナの画家ジナイーダ・セレブリャコワ1884~1967の長女タチアナは、ソ連の著名なバレリーナだった、この絵の時は11歳だから、これは年長のバレリーナたち、割と表情は明るく、画家は好意的にバレリーナたちを描いている

 

28 Picasso : The dance 1925年6月

やや古典的な画風から、突然、画風が変って批評家を驚かせた有名な作品、三人の人物の身体がばらされて描かれている、右側は男、顔や身体各部分の向きや位置など極端だが、それによって強烈なリズムが表現されている、ダンスとは本来そういうものかもしれない

 

29 Sebastián Llobet Ribas:Ballet Lessons 1930

このバレリーナは、レッスンを受けている途中の短い休憩か、鏡に映った自分の体をチェックしているが、何かが上手くいっていないのだろう、不安そうな表情、リョベット・リバス1887~1975はスペインの画家

 

30 ルシアB : バレリーナ 2013

ルシアBは現代のボリビアの画家、踊るバレリーナの身体は美しいが、動きのある身体は描きにくい、写真を介すると肉眼視とは立体感が微妙に違うので、画家は一般に写真を介することを好まない(この絵が写真を介したかどうかは分らないが)