[今日の絵] 1月後半
21 Pieter Bruegel the Elder : 鳥の罠のある冬の風景1565
戸外にいる人間を描く場合、人間の周囲の空間に、道、家、空、木々、畑、山、川などあって、奥行きが全く違う。この絵は右上右下に烏がたくさんいて、右下の板の「罠」が何か可笑しい、烏は掛かっていない。人は自由に遊んでいるが、烏も自由に遊んでいる。
22 安藤広重 : 目黒の太鼓橋 1857
この絵は広重1797~1858の最晩年で、幕末も押し迫る頃、昨日のブリューゲルと比べても、遠近感の見事さや、人の動いている感じなど、描写はいずれも卓越している
23 Pissarro :ルーヴシエンヌの雪道1870
ルーヴシエンヌはパリ郊外の町で印象派の画家たちが集まった。1869年ピサロはここに移り住み、繰り返しこの町を描いた、計8回の「印象派展」(1874~86)にすべて出展したのはピサロだけだから、この町は「印象派」誕生を記念すべき町でもある。雪の地面も空も明るく、光が満ちている
24ゴッホ : 雪のある風景1888
ゴッホの描く風景は、遠近感が十分あると同時に、大地の存在そのものに力がある、だから「この大地の上に人間がいるんだ」という力強い印象を与える
25 Nikolai Kasatkin : 恋のライバル1891
ニコライ・カサトキン1859-1930はロシアの画家、社会的リアリズムの先駆者といわれ、農民や労働者をたくさん描いた、これは初期の絵、二人の娘さんは右奥にいる軍人らしい青年を狙っているのか、二人とも厳しい表情がリアル、広い雪道にあちこち人がいるのがいい
26 Jacob Nöbbe : 氷かき1906
ヤコブ・ネッベ1850-1919はドイツの画家、この絵は湖畔だろうか、不思議なタイトルだが、湖の氷を切り出して荷車に積んでいるようだ、先に鉤のついた棒はそのためのものか、左手前三人が氷を一生懸命「押している」感じがいい
27 Fabio Cipolla : Niños frente a una pastelería
ファビオ・チポッラ1852- 1935はイタリアの画家、風俗画などを描いた、これは「ケーキ屋の前の子どもたち」、店から出てきた子どもは買ってもらったけれど(左側は待機している馬車か、買いにきたのは裕福な母子なのだろう)、それに対して手前の子どもは見るだけなのか
28 Hans Bulscheck : 労働者の街1920
ハンス・バルシェック1870-1935はドイツの画家、鉄道技術者の息子で、鉄道、駅などを多く描いた、左翼活動家でナチス政権の成立とともにパージ、この絵は、労働者が真っ黒な影として描かれている、名作ナチスや旧ソ連時代の「御用絵画」とは真逆
29 Władysław Chmieliński : ワルシャワの新市街にある聖母マリア教会
ヴワディスワフ・フミエリンスキ1911-1979はポーランドの画家、ワルシャワの街をたくさん描いた、小さく描かれている人々は教会から出てきたところか、教会、人、雪の雰囲気が見事に描かれている
30 Marc Chagall : A village in winter 1930
シャガールの絵は、ほとんど大部分が<愛>を描いている、この「冬の町」も然り、「家」というのは、そもそも、男女が愛し合って一緒になり、子どもが生まれてくる場所のことだ、家の集まりである「町」も当然そう
31 Jules Renè Hervè : Notre dame sous la neige
ジュール・ルネ・エルベ1887-1981はフランスの画家、パリの街をたくさん描いた、彼の描くパリの街はどれも美しいが、それは人間が美しいから街も美しいのだ、この「雪のノートルダム寺院」も、小さく描かれた人間に光が当たって美しい小さく描かれた人間に光が当たって美しい。道路の奥の明るさや街灯の光、そして手前の店から雪道への反射光も美しく、光と人間と街との調和を画家は描いたのかもしれません。