[今日の絵] 5月後半

[今日の絵] 5月後半

 

17 野田弘志:聖なるもの THE-1, 2009

「本来の僕の絵は、全部「存在論」です。だから存在するとはどういうことかを中心に考えて描いているわけで・・・、人が生まれて生きて死んでいく、それを美しいと思って見つめているわけです」(自註より)

 

18 藤田嗣治 : 婦人像 1909

東京美術学校在学中の作品、モデルは最初の妻(未入籍?)、パリ留学以降とは違って写実的だが、黒髪、横顔、白い着物とその線模様、紺の帯と、形と色調の落ち着いたバランス、全体の薄塗り、そしていかにも日本女性らしい顔が瑞々しい

 

19 小磯良平 : 和装婦人 1926

小磯(1903~88)は東京芸大教授を務めた洋画家、「斉唱」など群像画で名高いが、少女や女性の画も美しい、この絵は東京美術学校在学中のもの、前かがみになった和装女性の、何か考え込んでいる暗めの表情、組んだ掌など、この女性の内面もしっかり描かれている

 

20 中山忠彦 : 緋のショール 1984

中山忠彦1935~は写実の洋画家、日本芸術院会員、日展理事長などを勤めた、女性画で名高い、モデルの女性はほぼすべて1965年に結婚した良枝夫人、画家自らヨーロッパで収集したアンティーク・ドレスがよく似合う

 

21森本草介 : 初夏の頃2005

森本草介1937~2015は写実の洋画家、彼の描く女性は、後方または横からのものが多いが、その静謐で気品ある姿形が美しい、この絵も代表作の一つ

 

22 塩谷亮 : 如月 2020

塩谷1975~は優れた写実の洋画家、本作の自註に「(岸田)劉生作品との邂逅によって生まれた私の作品を紹介します。劉生の肖像画では、取って付けたように草花などの小物を持たせることが多く、面白い効果を生んでいます。この作品で手にしているのは三角葉のミモザです」

 

23 島村信之 : エンジの衣裳 2005

島村1965~は写実の画家、彼の描く女性は、窓辺でゆったりと凭れている姿が多い、この絵も、顔、髪、エンジ色のブラウス、腕、肘、掌、そしてソファとカーテンなどが、絶妙なバランスを保ち、身体全体の均衡がとても美しい、そして視線は遠くを見ている

 

24 Monet : サン=ラザール駅 1877

モネは4か月ほど駅の近くに部屋を借りて住み、同駅の絵を十数枚描いた、よほど絵の主題として気に入ったのだろう、どの絵も大小の違いはあれ蒸気機関車と煙や湯気を描いている、鉄の構造物、人体という有機物、煙という気体・・、空間の占め方がそれぞれ違う面白さ

 

25 Nobert Goeneutte : The Pont de l'Europe and Gare Saint-Lazar1888

ノルベール・グヌット1854~94はフランスの画家、版画家。印象派の影響を受けた、この絵は11年前にモネの描いた同じサン=ラザール駅を陸橋の「ヨーロッパ橋」の側から大きく鳥瞰した、駅に入る線路はすべて巨大な「ヨーロッパ橋」の下を通る、モネとはまた違ういい構図だ

 

26 Tissot: The Departure Platform, Victoria Station 1880

駅が絵の主題になるのは、そこに人が集まるからだろう、これは「ヴィクトリア駅の出発プラットフォーム」、汽車に乗る人が続々と集まり、プラットフォームの端まで馬車が入ってくる、出発する乗客はみな似たような表情をするのか、旅立ちの顔、旅人の顔がそこにある

 

27 Spencer Gore, Letchworth Station, 1912

パリのサン=ラザール駅やロンドンのヴィクトリア駅はターミナル形式(=行き止り)だが、こちらは鉄道が「通過する」普通の駅、田舎の駅のホームは即席の社交場みたいで楽しそう、人々はけっこう長い時間列車を待っているのか、スペンサー・ゴア1878~1914は英国の画家

 

28 Colin Campbell Cooper : Chatham Square Station 1919

都市には「高架」駅もできるようになった、これは1919年のニューヨーク、マンハッタンのチャタムスクエアー駅、1955年まであった駅、走っているのは汽車ではなく電車だが、街には馬車も自動車もいて、ニューヨークの活気が分る、クーパー1856~1937は「摩天楼」を多く描いた画家

 

29 Stanhope Alexander Forbes : The Terminus, Penzance Station 1925

「終点、ペンザンス駅」とあるのは英国最西部のコンウォール州ペンザンス町の駅、1852年から今でもある、すぐ向こうに畑が見えるから町はずれなのかもしれない、でも終点駅らしい雰囲気と活気がある、人々はいかにも旅立つという感じで、大きなトランクが列車に積み込まれる

 

30長谷川利行: 赤い汽罐車庫1928

長谷川利行1891~1940は独学で絵を学んだ人、無名のまま浅草近辺の貧民街で絵を描き、酒を飲むという荒れた生活だった、画家としての評価はごく近年、この絵は汽罐車の車庫だが、名画だと思う、手前左は女の子を含む家族連れで、見学なのか

 

31Ray Prohaska : 20世紀特急列車1941

レイ・プロハスカ1901~81はユーゴ出身のアメリカの画家、「20世紀特急列車」はニューヨークセントラル鉄道の特急で寝台列車、ニューヨークからシカゴまで一晩を含み20時間で到着、1967年に廃止、これはニユーヨークの地下のホームだろうか、客もいかにもアメリカ人