[今日の絵] 6月前半

[今日の絵] 6月前半

1 Morisot : Young Lady Seated on a Bench, 1864

画家はただモデルの身体を描くのではなく、身体の姿勢や体勢を注意深く整える、体の向きや傾きだけでなく、何かを手にしていれば、それが体勢を創りもする、ベルト・モリソはマネの義妹の女性画家、白い傘を両手で軽く支えていることが美しい姿勢になっている

 

2 Bertha Wegmann : Portrait of Marie Triepcke 1885

左手で傘、姿勢をやや傾けているのは、池の水面を生かすためか、右手もベルトのリボンに軽く手を当てている、そして、視線をしっかり鑑賞者に向けているので顔に注意がいく。ベルタ・ヴェークマン1847~1926はドイツ系デンマーク人の女性画家、女性や子どもの画が多い

 

3 Wilhelm Menzler Casel : A Pause from Reading 1889

カーゼル1846~1926はドイツの画家、肖像画、風俗画、とりわけ花と一緒の女性を描いた、この絵の女性も今まで熱心に本を読み耽っていたのだろう、今、本をちょっと置いて何か考えている、その考えている表情がとてもいい

 

4 Sir Frank Dicksee :Elsa, Daughter of William Hall 1927

フランク・ディックシー1853~1928は英国の画家、ラファエル前派の影響がある、この絵は上流階級のお嬢様なのだろう、薄いピンクのドレス、黄色のショール、薄緑色の椅子と淡い色彩のバランスが絶妙で、リラックスした肩と両手、そして眼が美しい

 

5 Philippe Swyncop : Portrait d'une jeune femme en bleu

フィリップ・スウィンコップ1878~1949はベルギーの画家、若い女性の絵をたくさん描いている、この絵は、左手を腰に当てた凛とした姿勢の美しさと、壁に掛けてある人形がいい、きっとお気に入りの人形なのだろう

 

6 Valentin Serov : Portrait of Henrietta Girshman 1906

ヴァレンティン・セローフ1865~1911はロシアの画家、優れた肖像画をたくさん描いた、どの絵も、描かれた人物の強い意志を感じる、この絵も簡素だが、その姿勢と表情にモデルの女性の「強さ」を感じる

 

7 J.W. Waterhouse:ランスロットを見詰めるシャロットの女性 1894

ウォーターハウス1847~1917はイギリスの画家、神話や文学を素材に女性の絵を描いた、この絵は代表作で、女性がただ椅子から立ち上がっているのではない、『アーサー王』伝説の城の中に閉じ込められた女性エレインが、ランスロット卿との叶わぬ恋に死ぬ直前の凄い表情

8 Hendrik Jacobus Scholten : Memorizing a melody

ヘンドリク・ヤコブス・ショルテン1824–1907はオランダの画家、女性の人物画などを描いた、この絵は「メロディーを覚える」とタイトル、お嬢さんがチェンバロを右手だけポソポソと弾いている、素人なのか、姿勢も斜めで、楽譜も傾いている、でも真剣な表情だ

 

9 F.W.Benson : Young girl by window 1911

ベンソン1862~1951はアメリカの画家で、家族や自分の娘たちをたくさん描いている、どの絵も手の動性に特徴があり、この絵も然り、そもそも若い少女はモデルとしてもじっと座っているのが苦手で、体が動きがちだから、こうした絵になったのか

 

10 Boldini : Portrait of Rita de Acosta Lydig 1911

モデルのリタ・デ・アコスタ・リディグ1875~1929は、「アメリカでもっとも絵のように美しい」と言われた社交界の女性、貴族の血を引き、誇り高そうな顔だ、妹のメルセデス・アコスタは女優グレタ・ガルボの恋人だった、ボルディーニの描く人物は身体の動性に特徴がある、この絵でも手がそう

 

11 Modigliani:Jeanne Hebuterne (with a scarf) 1919

モディリアーニはカフェの客などを掴まえて急いで描くことが多かったが、これは妻、しっかりポーズを決めたのだろう、首からスカーフ、両手への流れ、顔の向き、微妙な傾げ方、髪の付き方、色彩バランスなど、見事という他ない、この絵は視線もしっかり描かれている

 

13 Otto Möller : 黄色いドレスを着たマルガ・メラー 1930

オットー・メラー1883~1964はドイツの画家、色彩の美しい絵を描いた、この絵は妻だろうか、椅子やテーブルクロスの模様とプレーンなドレスとの対照が美しい、顔にもドイツ人らしい「強さ」が感じられる

 

14 William Whitaker : Actress

ウィリアム・ウィテカー1943~2018はアメリカの写実系の画家、女性をたくさん描いている(白い簡素な衣服が多い)、この絵は「女優」と題されているがあまり女優らしくない、舞台や映画の中ではなく身近に、ただそこにいるという感じがある、それがこの画家の美質なのかもしれない

 

15 Virgilio Costantini : The Model's Repose

ヴィルジリオ・コスタンティーニ1882 – 1940はイタリアの印象派画家、この絵は面白い、描いているモデルが途中で休んでいる時のポーズに、偶然興味を引かれたので、あらためてそちらも(を?)描いたのだろう、力を抜いてリラックスした体勢も美しく、「絵になっている」