[折々の言葉]  5,6月ぶん

[折々の言葉]  5,6月ぶん

 

彼女はその恋を味わって悔いもなく、怖れもなく、悶えもなかった。(フロベールボヴァリー夫人』) 5.1

 

どうか私を想像してほしい。あなたが想像してくれなければ私は存在しないのである。(ナボコフ『ロリータ』) 5

 

[アルヌー夫人を初めて見た青年フレデリックには]それは幻のようであった。彼女はベンチのまん中にたった一人で腰かけていた。・・これほどの小麦色をした素晴らしい肌、魅力的な体つき、光に透きとおるような細い指は一度も見たことがなかった。名前は何というのだろう、どこに住んで、どんな過去をもっているのだろう?・・[彼女を]肉体的に所有しようという気持ちさえも、もっと深い欲求と、かぎりなく苦しいほどの好奇心の中に消えてしまった。(フロベール感情教育』) 8

 

おんなたちは、世界で行われている規則を拒んでも、少しも間違いではない。それは、男たちが女たちにはかることなしに作ったものだから。(モンテーニュ)12

 

平等は愛の最も固い絆である(レッシング『賢者ナータン』)15

 

色彩は生命のない存在の装いであり、どんな物質にも色がある。しかし音は運動のあることを知らせ、声は感覚をもった存在のあることを知らせる。歌を歌うのは生命ある身体だけだ。(ルソー『言語起源論』)19

 

左右の目が別々にものを見ているみたい、何もかもが二重に見える。(シェイクスピア『夏の夜の夢』) 22

 

なぜ人は、古い法律や古い意見に従うのか。それらがもっとも健全であるからか。否、それらが、それぞれ一つしかなく、多様性の根を我々から取り除いてくれるからである。(パスカル『パンセ』)26

 

本質的なことに関して区別をつけることが重要であるのと同様に、事柄の核心に関わらないことに関しては、区別をつけないことが重要である。(フレーゲ『思想』) 29

 

愛というのは単純に肯定し合うことではなく、互いの否定性を飲み込み合うことだ。(千葉雅也、ツイッターより) 再掲6.2

 

しかしまた、他人の手は私の手ほど役に立たないだろう。(デカルト方法序説』) 5

 

人は良心によって悪をするときほど、十全にまた愉快にそれをすることはない。(パスカル『パンセ』) 9

 

ひとは行くところがなくないと 花のそばにやってくる (岸田衿子『いそがなくてもいいんだよ』) 13

 

この世がしんとしずまりかえっているなかで 僕は初心な賭博者のように 閉じていた眼をひらいた (黒田三郎) 16

 

われわれは、自分に多くのものが欠けていることをしきりに感じるし、自分に欠けているものは他人が持っているような気がするものだ。(ゲーテ『若きヴェルテルの悩み』) 19

 

この人に話させると、些細なことが大切な打ち明け話のような気がし、ちょっとにっこりすると、人は夢見るような気持ちにさせられる。(フロベール感情教育』) 23

 

もしも百年が、この一瞬にたったとしても、何の不思議もないだらう (三好達治) 26

 

人間はもはや芸術家ではない、人間は芸術作品となったのである。(ニーチェ悲劇の誕生』) 30