[演劇] 唐十郎『少女都市からの呼び声』

[演劇] 唐十郎『少女都市からの呼び声』 花園神社・紫テント 6月26日

(写真は舞台、おどろおどろしい肉体が乱舞する祝祭性、古代ギリシアのバッコス祭はたぶんこんな雰囲気なのだろう、奥山ばらばの踊りがいい)

新宿梁山泊、金守珍演出。花園神社の紫テントは久しぶりだが、この熱気は本当にいい! 若い観客が多いのも驚き、最近は演劇の観客は中高年が多くなっているから。本作は1985年初演だが、唐十郎の演劇の魅力の柱ともいうべき要素がすべて揃っている。まず、めちゃくちゃ楽しい非日常的な祝祭性、それも下町のバッコス祭ともいうべき、いかがわしさに満ちた肉体性の乱舞。そして、その中から現れる、このうえなく高貴で美しい純愛。本作の場合は、双子の兄と妹との純愛だ。兄を演じる六平直正と妹を演じる水嶋カンナが素晴らしい(↓左と中央)。

そして、戦争。唐の作品にはたいてい軍人が重要な役割を果たす。本作では、満州を転戦する日本軍の連隊長を風間杜夫が演じている。風間は俳優人生を完成するにあたって唐十郎に出合い、このところ新宿梁山泊で立て続けに見られるのは嬉しい。(写真↓)

そして、今回あらためて思ったのだが、新宿梁山泊の看板女優である水嶋カンナはやはり「お姫さま」キャラなのだと思う。本人は、座談会で「私は基本、あばずれ担当」と謙遜しているが、彼女の魅力は姫キャラだと思う。(写真↓ 右の男は、唐十郎の息子の大鶴義丹、イイ男で、よく見ると唐十郎に似顔)

また、今回気が付いたのだが、唐作品はそのつどの上演に偶然性が含まれている。端役に、「一輪車に乗った島田雅彦」という若い医者が出てくるのだが、初演では実際に島田雅彦が演じたらしい。今回は、染谷千里という少年のように可愛い東大出の女優が演じて、その軽快な動きがすごくよかった、これも一種の踊りの祝祭性だろう(写真↓左端、右端は養老先生(風間杜夫)、東大の養老教授は実際に舞台に出たわけではないが、唐十郎が本作を作るにあたって養老教授に取材したという)。