[折々の言葉]  9.10月ぶん

[折々の言葉]  9.10月ぶん

 

運命というものは、気まぐれもので、ここかしこと跳び回りたがるのだから、私たちが自分一人だけは無関係で、幸せでいられるなんて、思ってはダメ。(エウリピデストロイアの女たち』)9.1

 

ほしいものを手に入れようと学問にいそしんでいると、[人間として]しなければならぬことを忘れてしまう。(シェイクスピア恋の骨折り損』) 8

 

私の思うに、役に立つならどんな言葉もわるいということはない。(ソフォクレスエレクトラ』) 11

 

すべてこの世は、一つの舞台。すべて男女は、つまりは役者。(シェイクスピア『お気に召すまま』) 15

 

「あの娘イザベルを、きれいだと思う?」「とてもきれいです。でもその点にはあまりこだわりません。あの人全体に特別な雰囲気があって、ぼくはそれに心を惹かれるのです。世にもまれなあの人は、一体何者なのです?」(ヘンリー・ジェイムズ『ある婦人の肖像』) 18

 

私の心は恋するように出来ており、私には自分で選んだ恋人が必要でした。その人は自分から出てまいりました。(ルソー『新エロイーズ』) 22

 

恋愛は人世の秘鑰(ひやく)なり、恋愛ありてのち人世あり、恋愛を抽(ぬ)き去りたらむには、人生なんの色味かあらむ。(北村透谷『厭世詩家と女性』) 25

 

美的生活とは何ぞやと問はば、吾人答へて曰はむ、糧と衣よりも優りたる生命と身体とに事ふもの是なりと。・・美的生活は、人性本然の要求を満足する所に存するを以て、生活それ自らにおいて既に絶対の価値を有す。・・恋愛は美的生活の最も美はしきものの一つ。(高山樗牛『美的生活を論ず』) 29

 

小説など読むと、[人生について]古くさいことばかり書いてあって、誰だってこんなことみんな知ってる、って思うけど、恋をすると、その途端にはっきり分るわ、誰も何にも知らないんだって、人はそれぞれ自分の人生の問題を解決していかなきゃならないんだって。(チェホフ『三人姉妹』) 10.2

 

22歳のイザベルには、人の目によく映りたい、もっとよく映りたいという願いがあり、何でも見、試し、知ろうという決意もあり、繊細で頼りなくゆれる焔のような精神と、熱心に自分中心に生きようという意欲とが、結合していた。(ヘンリー・ジェイムズ『ある婦人の肖像』) 6

 

そもそも武術より文芸の方が優れているなどとのたまう御仁は、拙者の前から立ちのかれるがよい。(セルバンテスドン・キホーテ』) 9

 

ぼくはアメリカに、離婚の夢を抱いてやってきた。離婚の唯一の理由は、妻がおちつきはらっているということだった。彼女の冷静さには限度というものがなかった。(セルゲイ・ドヴラートフ『これは愛じゃない』) 13

 

幸運というものは、心を開かせるばかりか、手まで大きく広げさせるものである。(シャーロット・ブロンテジェイン・エア』) 16

 

われわれが自己表現する際に用いる言語は、すでにもっとも完全な芸術作品であるのだが、このことを考察する人はほとんどいない。(シェリング『芸術の哲学』) 20

 

美でないような真理は絶対的真理ではないし、また逆も然りである。・・同じように、美でないような善もまた絶対的善ではないし、また逆も然りである。(シェリング『芸術の哲学』) 23

 

[女神]アテナは知恵と力を兼ね備えているが、彼女には女性としての柔和さが欠けている。[ゼウスの妻]ヘラは力強いが、知恵も愛すべき魅力もなく、愛すべき魅力はアフロディーテの帯を借りて身に付ける。アフロディーテは愛すべき魅力はあるが、知恵も力もない。(シェリング『芸術の哲学』) 27

 

自然は、男性の形態にあっては明らかに様式をもっているのに対して、女性の美にかんしては、きわめて多くの特殊性がその造形に際してそのものとして受け容れられるべきなので、ある意味では[様式ではなく]手法化されているといえる。(シェリング『芸術の哲学』) 30