[今日の絵] 11月前半

[今日の絵] 11月前半

1 Cranach : Saint Elizabeth 1514

何かを「読む」とき、人は特有の美しい表情になる、他者の声に心を開くからだろう、古くは聖書を読む聖人から、近代では小説を読む女性まで、「読む人」は繰り返し絵に描かれた、この聖エリザベスが読んでいるのは聖書らしいが、ある箇所に沈潜しているのか

 

2 Rubens : 聖シモン(読書する男) 1611

「聖シモン」とも「読書する男」とも呼ばれている絵、該当箇所を探しているのか、それとも拾い読みをしているのか、そういう場合は何となく聖人らしくないが

 

3 Carlo Dolci of Florence : Saint Catherine of Alexandria reading

アレクサンドリアの聖カテリーナ287~305はローマ時代に王女だった人で18歳で殉教、キリスト教の理論闘争を行った学者でもあった、だから熱心に研究しているのか

カルロ・ドルチ1616~86はイタリアの宗教画家

 

4 Georges de la Tour : 聖歌隊の少年 1645

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール1593-1652はフランス王ルイ13世付きの画家、蝋燭の光で人物が照らされている絵が多い、この聖歌隊の少年は、じっと楽譜か歌詞を見ているのか

 

5 Gerrit Dou : Old Woman Reading a Book 1630年代

ヘリット・ドウ1613~75はオランダの画家、レンブラントの弟子だが、師のように大胆な筆致ではなく細かく描く人、モデルを長時間座らせるので、次第に肖像画の依頼が減ったといわれる、この絵のモデルはレンブラントの母らしい

 

6 Rembrandt : man reading 1648

この絵は、レンブラントの弟子たちの作とみられてきたが、最近はレンブラント本人の作とも見られている、ある特定の個人の写実ではなく、様々なイメージを総合して架空の人物を描いたのではないかとも

 

7 Henry Robert Morland : 鐘形の紙製ランプかさの下で読む女性1766

ヘンリー・ロバート・モーランド1716-1797はイギリスの肖像画家、女性をたくさん描いた、モリエール『女学者』からポンパドゥール夫人まで、17世紀以降のヨーロッパには学術研究する貴族の女性がいた、この時代以降の「読書」の絵では、女性もたくさん描かれる

 

8 Cezanne : 「レヴェヌマン」紙を読む画家の父 1866

父の意向に反して画家の道へ進んだセザンヌは27歳、父が読んでいる新聞はいつも父が読む新聞ではなく、ゾラが痛烈にサロン展を批判した記事が載った「レヴェヌマン」紙、後に掛かっている絵もセザンヌだが、父はそれを背にしている

 

9 Gogh : the novel reader 1888

アルルで描かれた絵、服装や後ろの本棚からして上流の女性だろう、熱心に「小説を」読み耽っている、線の単純な使い方と、少数の色彩のバランスが見事

 

10 Renoir : Young girls reading 1889

ルノワールはそれぞれ別の「読書する二人の女性」を何枚も描いている、この絵は、お揃いの服からして姉妹だろう、読書する人はそれだけで美しいが、二人の姉妹の仲のよさも表現されて、女性たちはますます美しく、全体の色彩も素晴らしい

 

11 Michael Peter Ancher : Young Girl Reading 1885

アンカー1849~1927はデンマークの画家で、庶民を描くが一人ひとりに深みがある、光と影のバランスがよく、これはマレン・ソフィー・オルセンという少女、顔に影になっており、かえって表情がよく分る、服もエプロンも青系統で静謐な感じ

 

12 Bertha Wegmann : Portrait of a Reading Woman

作者1847-1926はドイツ系デンマーク人の女性画家、友人などの女性を多く描いた、たくさんの読書の絵があり、どれも姿勢そのものに表情があって美しい、そして色彩のバランスも

 

13 Fanny Fleury : Woman reading

ファニー・フルーリー1848-1920は、フランスの女性画家、女性を多く描き、パリのサロンにたくさん出展した、この絵の女性は上流階級だろうか、何冊も本を置いて研究的に読んでいるのかも、絵としては、色彩の配置が卓越している

 

14 Tony Robert Fleury : Girl

作者1837-1912は、昨日のFanny Fleury1848-1920と夫婦なのかと調べたが分らなかった、この絵は、光が胸部を明るく照らし、顔はやや影になっているが、少女の「読み耽っている」感じがとてもよく描かれている

 

15 Zinaida Serebriakova : Eugene (Portrait of the artist's son) 1917

セレブリャコワ1884-1967はウクライナ出身のロシアの画家、彼女は4人の子供を繰り返し描いており、これは長男のユジーヌ1906-91だろう、まだ子ども顔だが、とても真剣に読んでいる

 

16 Carl Theodor von Blaas : Woman Rading

カール・ヴォン・ブラース1886-1960はオーストリアの画家、肖像画家として名高く、ウィーンとヴェネチアの二つの美術アカデミーの教授だった、この絵の女性は瞼を閉じているわけではなく、やや厳しい表情で文字を真剣に見つめている

 

17 Francine Van Hove

作者1942~はフランスの女性画家、「夢見るような態度の若い女性を描く」人らしい、そういえばこの絵の女性も、恋愛小説を読みながらうっとりと夢見ているのかもしれない

 

18 Sherree Valentine Daines :

作者は1956年生まれのイギリスの女性画家だが、絵に描かれた光景は、帽子や服装からすると少し前の時代に思われる、二人の女性が同じ本の同じ頁を楽しそうに見ながら、何か言っている