[オペラ] ラモー≪レ・ボレアード≫ 寺神戸亮企画・指揮

[オペラ] ラモー≪レ・ボレアード≫ 寺神戸亮企画・指揮 北とぴあ 12月8日

(写真↑は舞台、右から3、4、8、12番目が4人のバロックダンサー[ケンプカ、ジャンカーキ、ドレ、松本]、中央2人が、寺神戸と演出のロマナ・アニエル)

 

バロックダンスが全体の3割を占めている。おそらくラモーの20作近いオペラ作品で最高傑作ではないか。それなのに、これが事実上の日本初演とは! 楽譜発見が20世紀後半で、ヨーロッパ初演が1982年。その後も上演回数は僅か。その理由は、楽譜の著作権をStil社がもち、上演には高額の著作権料が必要だからだ。楽譜はいまだ出版されておらず、今回も電子版のレンタルだという。ラモー80歳の遺作であり、生前に上演されなかったので、こうなったのだが、そもそも芸術作品は公共財であり、これはおかしいと思う。(写真↓は、北風の神ボレアス[小池優介]とヒロインのアルフィーズ姫[カミーユ・プール])

1,2幕はやや緩慢だが、3,4,5幕とテンションが高揚し、音楽に深みのある作品だ。とりわけ時間的に3割を占めるバロックダンスが素晴らしい。能の『道成寺』は、舞いがほぼ全景となっているという点で、能の最高傑作だと思うのだが、おそらくオペラも、その本来の形態では、踊りが大きな比重を占めていたのだろう。このバロックダンスも、それぞれ似ているようで微妙に違い、何よりも美しい。ラモーもモーツァルトも、その音楽の美しさの核は舞曲的な様相にあるのだと思う。それは、人間は、喜びの感情が高まると、体が自然に動き出し、踊りたくなるからだろう。今回のバロックダンスの踊り方はどこまでラモー自身の指定があるのだろうか。それとも振付はまったくこちらで考えているのだろうか。(写真↓は、バリー・コスキー指揮のディジョン歌劇場の上演2019、バロックダンスは、今回とだいぶ違う感じだ)

今回、他に感じたのは、合唱の美しさである。特に第3幕は、地から湧き出すような歌声が響き、ヴェルディを思わせる。ラモーの音楽は、天空を天翔(あまがけ)るような美しさが魅力なのだが、地から湧き出すような歌声もあるのだ!物語の筋は、まぁ分りやすいが、アポロンが最後に登場してデウス・エクス・マキーナの解決をするのが、とても面白かった。ギリシア悲劇だけではなくオペラでも、デウス・エクス・マキーナが登場するとは思わなかった。それにしても、今回完全版?を日本初演した寺神戸亮と楽団「レ・ボレアード」の功績は大きい。まだ世界的に上演そのものが少ないのだから。(写真↓は、マルク・ミンコフスキー指揮によるリヨン歌劇場2004)