寺山修司「上海異人娼館」

[ダンス劇?] 11.5  寺山修司「上海異人娼館」  東京キネマ倶楽部

フランスの官能小説「O嬢の物語」を寺山修司が映画化した。それをダンス・エレマンが新たにダンス劇化。女優の緒川たまきとバイオリニストの川井郁子を主演にして、それにダンス陣が加わる。ジャンル横断的な寺山ワールドが実現した。科白はなし。全部が踊りと音楽。異質な諸要素からなる猥雑さが、美とうまくミックスする。


上海の娼館の女主人「黒蜥蜴」に緒川、「マドモアゼル桜(おお)」に川井。桜は娼館で娼婦となって客を取る。第三者とのセックスプレイという「試練」を通じて、愛人ステファン卿との「愛の強さ」を確かめるはずだったが、結局、ある少年と本物の恋に陥り、嫉妬した卿が少年を殺して幕。


娼館の各部屋の男女の「営み」を、ダンサーたちが多様なダンスで表現。ダンサーの鍛え抜かれた肉体のスポーティな動きが、「営み」を美的に昇華する。緒川と川井はダンサーでないので、肉体表現のレベルは極端に落ちる。緒川は息を呑むような絶世の美女で、SM用の鞭を持って凛と立つだけで凄い存在感。「三人姉妹」のイリーナを見たことがあるが、何とまあ違う役(^o^)。大小の黒い蜥蜴を抱く姿は見応えがある。


第一級のバイオリニスト川井の使い方が面白い。桜は科白の代りにバイオリンで自己表現するが、事前の録音をアンプで再生して、舞台では身悶えしつつ「弾くふり」をする。もしこれが実演だったら物凄いのにと思う。ピアノとヴァイオリンくらい実演できそうなのに何故? バッハの無伴奏を狂気のように弾きまくってエロスを表現するのは素晴らしいアイデア! 生演奏でないのが残念。