[今日の絵] 2月後半
14 Berthe Morisot : The Piano, 1889
少女というのは、一人でいるより集団でいる方が少女らしい、プルースト『失われた時を求めて』のヒロインの一人、少女アルベルチーヌは、最初集団の一員で登場する、日本のモーニング娘もAKBも集団だ、少女は、大人の女性になったときに自分固有の顔を持つのか
15 Renoir : The reading, 1890
描かれているのは、ルノワールの友人で、画家でも収集家でもあったアンリ・ルロルの娘イヴォンヌクリスティーヌだと思われる、二人の服の色の対比が美しく、背中に手を回すなど、姉妹の仲睦まじさがよく分る
16 Gauguin : Two tahitian women, 1899
ゴーギャンがタヒチで描いた二人の若い女性、左の女性は、皿に盛った果物のマンゴーが胸に触れ、右の女性は、半分隠した胸に花を持ち、二人は肘から肩にかけて身体が触れ合う、二人は親密な関係なのだろう、全体の色彩バランスも見事で、匂い立つようなエロスが表現されている
17 Munch : The Girls on the Bridge, 1900
こうやっていつもグループでいるのが少女たち、橋の上で何か相談している、これから一緒にどこかへ行くのか、遠近法的奥行がそれを感じさせる、左側にこんもりした大きな木があり、水に映ってさらに不気味になっている、彼女たちの無意識の不安なのか
18 Bonnard : Girl with Parrot, 1910
ピエール・ボナール(1867~1947)は「ナビ派」と呼ばれるフランスの画家で、日本美術の影響も受けた。「オウムといる少女」は、東南アジアだろうか、周りに召し使いがおり、裕福な家のお嬢さんか、屋敷の正面に白いものが見えるが、洗濯物にしては、二点だけしかない
19 Schiele : Two Little Girls, 1911
シーレはまだ20歳だから、彼の娘ではない、シーレ特有の人物スタイルを生み出したのが1910~11年頃といわれるが、この絵の左側の少女の顔と体はいかにもシーレ風だ、やや病的でグロテスクといわれるが、そこには彼にしか描けない美しさがあると思う
20 Zorn : The sisters Schwartz, 1899
アンデシュ・ソーン(1860~1920)はスウェーデンの画家、「シュヴァルツ家の姉妹」は、二人とも絵を描いている、手前の石膏像が、斜め上から見下ろされる低い位置にあり、全体の光が逆光気味で、白と赤の色の対比が美しい、少女の表情もしっかり描き込まれている
21 Dorothea Tanning : Door 84, 1984
ドロテア・タニング(1910~2012)はシュール・リアリズムの画家で、マックス・エルンストの妻、右側の少女は男性(父親?)の膝に乗っている、左側の少女(姉?)はそれを嫉妬して入室しようとするが、入れまいとする妹とドアで攻防、可愛い姉妹だが、二人とも足が逞しいのがいい
22 Correggio :Portrait of a young man, 1520
コレッジョ(1498~1534)はイタリア盛期ルネサンスを代表する画家、この絵には、青年の透き通るような美しさが表現されている、特に髪の毛、眼、口のあたり、ルネサンス絵画には「天使」に仮託して美少年がたくさん描かれているが、美青年の絵も多い
23 Caravaggio :The Lute Player, 1596
カラヴァッジオ(1571~1610)はバロック期のイタリア画家、光と影のコントラストで名高いが、さまざまな名目で少年をたくさん描いている、どれも少女のように美しい少年だ
24 Rubens :Nicolas Rubens, 1626
描かれているのは、ルーベンスの二男ニコラス、5、6才だと思われる、わずかの線と面だけで、これだけ見事に、その瞬間の表情を描き切っている、たしかにルーベンスのデッサンは卓越している
25 Manet : シャボン玉をもつ少年1867
描かれているのは14歳の長男レオン、20歳のマネとマネ家のピアノ教師だった22歳のシュザンヌとが内縁の頃に生まれた、「シャボン玉」は17世紀から描かれ、すぐ壊れそうな微妙な存在感のためだろうか、この絵でも、少年は緊張してシャボン玉を見詰め、身体全体のバランス感がすばらしい
26 Cézanne : 赤いチョッキの少年1895
1886年に死んだ父の遺産を得たセザンヌは、初めてプロのモデルを雇い様々なポーズを取らせて描くことができた、「赤いチョッキの少年」は何枚も描かれたが、これはセザンヌの最高傑作といわれる、大きな右腕など造形が自由になり、少年らしからぬ深刻に考え込んだ表情をしている
27 Serebriakova : Portrait of E.I. Zolotarevskii in childhood, 1922
ジナイーダ・セレブリャコワ(1884~1967)は少年や少女をたくさん描いた、どの顔にも眼に生命感があり、人間の顔の美しさが際立っている、この少年は、顔は中性的で、そして知的に美しい
28池永康晟 : 少年・翔 2021
池永康晟1965~は日本画家、自分で染めた麻布に岩絵具で描くといわれる、ここに描かれた俳優/モデルの「翔」は2006年生れでドイツ人の父と日本人の母をもつ、写真で見るとあきらかにハーフの顔だが、この絵は「ハーフらしさ」を押さえているのか