ケアード演出『夏の夜の夢』

charis2007-06-10

[演劇]シェイクスピア『夏の夜の夢』 J.ケアード演出 新国立劇場


(写真右は、左から、妖精(神田沙也加=松田聖子の娘)、ロバのボトム、ティターニア(麻美れい)。写真下は、左から、ヘレナ(小山萌子)、ディミートリアス(石母田史朗)、ハーミア(宮菜穂子)、ライサンダー(細見大輔))

前から三列目、中央ブロックという良い席で観劇。この作品のもつ祝祭性・夢幻性が十二分に発揮された、とても楽しい舞台だった。何よりも、全体が若々しく、躍動感に満ちている。ケアードはRSC(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニ)の名演出家として知られた人だが(そして、ミュージカル『レミゼラブル』を創った人)、2005年12月のRSC東京公演(グレゴリー・ドーラン演出)の『夏の夜の夢』よりも、今回の舞台の方が良かった。日本人による、日本語のシェイクスピアが、イギリス人によるRSC公演を上回る出来になるとは、本当に嬉しいことだ。成功した理由として、(1)生演奏の音楽と躍動感あふれる踊り、(2)劇中劇としての笑劇を個性的・喜劇的にとことん深めた、(3)回り舞台を生かした舞台装置の斬新さ、衣装の美しさ、(4)劇中の人物造型の明確化と、若い役者のスポーティな身のこなし、(5)並行する三つの要素の統一の成功、などが挙げられる。


(5)をもう少し説明すると、この作品は、(a)へレナとハーミアを中心とする結婚話のもつれ、(b)ボトムらの素朴な職人たちの劇中劇としての笑劇、(c)妖精の王オーベロンとティターニアの夫婦喧嘩と妖精パックの魔法の悪戯という、本来は相互に無関係な三つの物語が同時に進行しており、なかなか統一が難しいのだが、この三つの要素がきわめてうまく統一されたということだ。その結果、”結婚を寿ぐ”という本来の主題がとても鮮明になった。


(4)についても、演出と役者の健闘を称えたい。特に、ヘレナとハーミアの造型が素晴しい。こんなに徹底的にコミカルなヘレナを見るのは初めてだが、小山萌子は実にぴったりだ。そして、ハーミアは、可愛いけれど強くて逞しい”アスリート美少女”という感じ。アクロバットのような側転、でんぐり返しありで、今まで何度も見た『夏の夜の夢』の中でも、こんなに健康美あふれる素敵なハーミアは見たことがない。宮菜穂子は初めて見る役者だが、ダンサー出身だからこんなに動きが活発なのだろう。それから、妖精パックを演じたチョウソンハが素晴しい。彼はまだとても若いが、軽やかな身のこなしといい、演技の初々しさといい、妖精パックはやはりこうでなければと思わせる。ライサンダーもディミートリアスも若々しい青年で、妖精たちもみな若い。要するに、『夏の夜の夢』は”若者劇”なのだということがよく分かった。(写真下は、左が妖精パック(チョウソンハ)、右が妖精王オーべロン(村井国夫))