『ロックオペラ モーツァルト』

charis2013-02-11

[オペラ]  『ロックオペラ モーツァルト』 渋谷・東急シアターオーブ


(写真はすべて原作のフランス公演より、日本公演はまったく同じではない。写真下の一番上は、左から(たぶん)レオポルト・モーツァルト(父)、ナンネル・モーツアルト(姉)、サリエリ、コンスタンツェ(妻)、モーツアルト、アロイジア(コンスタンツェの姉))



2009、2011年にパリで大ヒットした原作を、アメリカの演出家マッキンリーが日本版を演出。モーツァルトサリエリの対決を軸に、モーツァルトの物語をロック・ミュージックに仕立てた「オペラ」。私は物語はともかく、音楽がどうなるかにとても興味があった。というのは、2008年に観た南アフリカ制作の『魔笛』が、木琴と笛という素朴な土着楽器ながら素晴らしいモーツァルト音楽になっていたからである↓。
http://d.hatena.ne.jp/charis/20081223


今日は初日なので、劇場はとても盛り上がっていた。お客さんは、オペラ・ファンとは明らかに異なるロック・ファンが多いようだ。舞台はとても面白かった。ロック音楽を中心とするミュージカルで、モーツァルトの音楽も、そのまま、あるいはアレンジしてたくさん登場する。モーツァルトその人を、パンク・ロック風の反権威・反抗的少年というキャラクターに仕立てたところがミソ。父レオポルトへの反抗、権威を振りかざすコロレド大司教への反抗、サリエリやローゼンベルク伯爵などウィーンの音楽守旧派への反抗と、モーツァルトは怒れる若者なのだ。それに、コンスタンツェとの恋愛と結婚、サリエリの嫉妬が絡み合う。映画『アマデウス』とも共通点はあるが、反抗する若者モーツァルトがロック音楽に合わせて、仲間たちと踊りまくるところが新しい。


第一幕は、絶叫調のロックがややうるさく感じられ、単調さもあったが、第二幕で、ヨゼフ二世やローゼンベルク伯爵が登場すると、舞台はぐっと面白くなった。画期的なドイツ語オペラ『後宮からの逃走』の成功、『フィガロの結婚』へのヨゼフ二世の賛意など、映画『アマデウス』と内容は重なる。音楽は、ピアノ協奏曲21番、『後宮からの逃走』序曲、『フィガロ』第三幕の結婚式シーンから二曲など、たくさんの引用はどれも素晴らしい。また、モーツァルトの曲をアレンジしたものもよかった。ただし、この作品のために新たに作曲したロック音楽(フランス人のドーヴ・アチアが主に作曲)は、モーツァルトの音楽に比べると、はるかに見劣りがする。ロック音楽は踊りには向いており、観客も一緒に体が動いてしまうような共感を会場と一体で持つという点では、若者には楽しいだろうなと思う。ただし、新作を加えずに、音楽の全部をモーツァルトの引用とそのロック風アレンジにすることはできなかったのだろうか。『アマデウス』はすべてモーツァルトの引用であったが、今回は、引用が中途半端で、効果が不足している。『魔笛』のパパパとか、『ジョバンニ』の地獄落ちとか、あまりにも短く断片的に引用されるだけで、引用される必然性がまったく感じられないのが残念。

東京公演の動画がYouTubeで見れます↓。
http://www.youtube.com/watch?v=7OIdo1835Fc


キャストなど案内HPは↓
http://www.mozart2013.jp/UserPage/Detail/7