2008-01-01から1年間の記事一覧

岩波講座哲学・『心/脳の哲学』

[読書] 岩波講座哲学・第5巻『心/脳の哲学』 08年5月刊 (写真は、デカルト生誕400年を記念したアルバニアの切手。デカルトがやや当世オヤジ風?) 岩波講座哲学(全15巻)の刊行が始まり、最初に第5巻『心/脳の哲学』が配本された。私もそこに寄稿している…

ツィンマーマン『軍人たち』

[オペラ] ツィンマーマン『軍人たち』 若杉弘指揮 新国立劇場(舞台写真。右は、終幕、傾く舞台で向き合う娼婦のマリーと兵士たち。下は、マリーとラ・ロッシュ伯爵夫人。その下は、カフェで女給(ストリッパー?)を囲む兵士たち。ウィリー・デッカー演出のシ…

映画『靖国』(2)

[映画] 李纓監督『靖国』 渋谷/シネ・アミューズ (写真右は、映画の映像より) 何よりもまず、この映画はユニークな衝撃力を持っている。靖国を、不可解で矛盾に満ちた場所として、誰の目にも分かるように視覚化したからだ。この映画の真価は、靖国を訪れる…

映画『靖国』(1)

[映画] 李纓監督『靖国』 渋谷/シネ・アミューズ (写真右はポスター。下は、現役最後の靖国刀の刀匠、刈谷直治) 李纓(Li Ying)監督の映画『靖国』を見た。警官の警備はあったが、表象芸術としての映画の特性を見事に生かした優れた作品だ。明治2年創立の靖国…

グート演出『フィガロの結婚』

[オペラ] ザルツブルク音楽祭製作『フィガロの結婚』 東京文化会館 (写真は2006年のザルツブルク音楽祭より。右は、スザンナとケルビム(ケルビーノの分身)、下は、舞台全景と、伯爵と伯爵夫人。空間を縦、横、斜めに走る直線の美しさ、白、黒のコントラスト…

シェイクスピア『十二夜』

[演劇] シェイクスピア『十二夜』 劇団LABO!公演 東京・神楽坂のtheatre iwato (写真下は、イギリスの大学の上演、その下は、1772年に描かれた『十二夜』の絵) 劇団LABO!は、夭折した劇作家、如月小春の劇団NOISE関係者によって結成された劇団。theatre iwat…

You Tubeに遊ぶ『魔笛』のパ・パ・パ

[You Tubeのお遊び] モーツァルト『魔笛』のパ・パ・パ ときどき、You Tubeでオペラシーンを覗いているが、アマチュアの音楽会や他の楽器への編成版など、普通では見られない面白いものがたくさんある。たとえば、『魔笛』の末尾、恋人のパパゲーナがいなく…

土井隆義『友だち地獄』(3)

[読書] 土井隆義『友だち地獄−「空気を読む」世代のサバイバル』(ちくま新書、08年3月) (写真は、ダリの絵「パリスの審判」、1950。アテナ、ヘラ、アフロディーテの三女神を美人コンテストで競わせ、勝者にリンゴを与えるイケメンのトロイ王子パリス。パリス…

土井隆義『友だち地獄』(2)

[読書] 土井隆義『友だち地獄−「空気を読む」世代のサバイバル』(ちくま新書、08年3月) (写真は、天を支えるヘラクレスを助けるアテナ。彼女はどこまでも「父[=ゼウス]の娘」で、オデュッセウスに”好意”を寄せても、恋愛や結婚には無縁の”バリキャリ系”女神…

土井隆義『友だち地獄』(1)

[読書] 土井隆義『友だち地獄−「空気を読む」世代のサバイバル』(ちくま新書、08年3月) (写真は、ダリ:「ナルシスの変貌」 1937) 社会学者の土井隆義氏の前著『個性を煽られる子どもたち』(岩波ブックレット)は非常に優れた本で、私もブログに書評を書いた…

『偽のアルレッキーノ』『カンパネッロ』

[オペラ] 絨毯座公演『偽のアルレッキーノ』『カンパネッロ』 台東区生涯学習センター(浅草)イタリアに伝わるコメディア・デラルテ(仮面を付けた即興喜劇)を取り入れたオペラの実験的上演。オケの部分はピアノが代行。20世紀イタリアの作曲家G.P.マリピエ…

サントリーホール『フィガロの結婚』

[オペラ] モーツァルト『フィガロの結婚』(サントリーホール) (写真右は、伯爵(M・ヴェルバ)とスザンナ(D・デ・ニース)。下は、サントリーホールの舞台設定。オケピットがないので、演技もオケも舞台に載る。後方と側面の客席にも観客が入るので、古代…

谷崎+マクバーニー『春琴』

[演劇] 谷崎潤一郎原作、サイモン・マクバーニー演出『春琴』(世田谷パブリックシアター) (ポスターは、春琴を演じる深津絵里) 谷崎潤一郎『春琴抄』は、盲目の天才少女と身辺を世話する少年とのサディスティックかつマゾヒスティクな愛を描いた傑作小説…

二期会『ワルキューレ』

[オペラ] ワーグナー『ワルキューレ』(二期会公演、東京文化会館) (写真右は、アムステルダム歌劇場、下は順に、バイロイト祝祭劇場、メトロポリタン歌劇場の『ワルキューレ』。) 演出はベルギーのローウェルス、指揮は飯守泰次郎。『指環』四部作の二番…

内田樹『ひとりでは生きられないのも芸のうち』(3)

[読書] 内田樹『ひとりでは生きられないのも芸のうち』(’08年1月、文芸春秋社) (写真は、J.G.ヘルダー(1744-1803)。「私らしさ」について明示的に語った哲学者の一人。「人間らしいあり方といっても人それぞれ独自のやり方がある。彼には彼自身の、彼女に…

内田樹『ひとりでは生きられないのも芸のうち』(2)

[読書] 内田樹『ひとりでは生きられないのも芸のうち』('08年1月、文芸春秋社) (写真は、ニコラ・プッサンの「エコーとナルシス」(17世紀)) 第6章の一節「縮小する自我という病」で内田氏は次のように言う。 >「自我の縮小」あるいは「自我の純化」はわ…

内田樹『ひとりでは生きられないのも芸のうち』(1)

[読書] 内田樹『ひとりでは生きられないのも芸のうち』('08年1月、文芸春秋社) (写真は、17世紀フランスの絵「ナルシス」) 本書の中心テーマは、若者の考え方の基調にある「自分らしい生き方」「私探し」「自己決定」「自立した人生」などへの根本的な批判…

新国『お気に召すまま』

[演劇] シェイクスピア『お気に召すまま』 新国立劇場・小ホール (写真右は、ポスター。写真下は、ヒロインのロザリンドを演じる1950年のキャサリン・ヘップバーン、その右は、1961年のヴァネッサ・レッドグレイヴ(20世紀屈指の名演と言われる)。その下は20…

北村文ほか『合コンの社会学』

[読書] 北村文・阿部真大『合コンの社会学』(光文社新書、07.12月刊) (写真右は、ジェイン・オースティン『エマ』のダンスパーティ。下図は、現代日本における未婚率の上昇。2005年では、30代前半の男48%、女33%が、30代後半の男31%、女19%が、未婚。こ…