2022-01-01から1年間の記事一覧

今日のうた(135) 7月ぶん

今日のうた(135) 7月ぶん 炎帝や宇宙由来の吾のゐる (加藤草児「朝日俳壇」7月10日、小林貴子選、「リュウグウの砂からアミノ酸が見つかった。我々地球の生命も宇宙から来たのか」と選者評。夏の太陽の輝きと、ハヤブサ2が持ち帰った小惑星リュウグウのアミ…

[今日の絵] 6月後半

[今日の絵] 6月後半 15 Modigliani : Madame Georges van Muyden, 1917 「ジョルジュ・ヴァン・ミュイデン夫人」はモディリアーニの知人なのか、彼の描く女性の美しさは、ある種のきわだった簡潔さに由来するのかもしれない、シンプルな顔、二次元平面的なド…

今日のうた(134) 6月ぶん

今日のうた(134) 6月ぶん 衣更(ころもがえ)駅白波となりにけり (綾部仁喜、6月1日は「衣更え」、女子高校生の紺色の制服が、夏の白色の上衣に変る、一人だとどうということもないけれど、駅のホームに大勢いると、「駅白波になりにけり」) 1 生きかはり死に…

折々の言葉(3)  5,6月ぶん

折々の言葉 5月 他のどんな人が取り組んでも、それを始めた当人ほどにはうまく完成されないような仕事がこの世にある。(デカルト『方法序説』) 2 歩いて旅をすること、それはタレス、プラトン、ピタゴラスのように旅をすること。哲学者たる者がどうして他の…

[演劇] 野田秀樹『パンドラの鐘』 杉原邦生演出

[演劇] 野田秀樹『パンドラの鐘』 杉原邦生演出 コクーン 6月24日 (写真は↓終幕近く、パンドラの鐘の下に立つミズオ(成田凌)とヒメ女(葵わかな)、この直後、ヒメ女は自らの意志で鐘の中に閉じ込められ、死ぬ) 1999年に世田谷パブリックシアターで、野田秀樹…

[演劇] 宮本研『美しきものの伝説』

[演劇] 宮本研『美しきものの伝説』 俳優座劇場 6月17日 (写真↑は、左から堺利彦、伊藤野枝、荒畑寒村) 実演を観るのは、この鵜山仁演出が二度目。。今回は科白をじっくり味わうことができた。終幕直前の大杉栄の言葉が素晴らしい。「花で飾った一本の杭を立…

[今日の絵] 6月前半

[今日の絵] 6月前半 1 Anthony van Dyck : Self-Portrait, ca.1620 ヴァン・ダイク1599~1641はバロック期のフランドルの画家、1620年にイギリスに滞在しジェームズⅠ世を描くなど宮廷画家として卓越していた、この瑞々しい自画像もその頃だが、彼はまだ20~2…

[演劇] デュレンマット『貴婦人の来訪』 

[演劇] デュレンマット『貴婦人の来訪』 新国立劇場 6月1日 (写真↓は、主人公の二人、クレールを演じた秋山菜津子と、イルを演じた相島一之、ともに素晴らしい名演) デュレンマットの原作の重要場面を、音楽を加味するなどメリハリを付けて前景化し、全体と…

能『道成寺』 友枝雄人

能『道成寺』 友枝雄人 国立能楽堂 5月29日 『道成寺』を実演で見るのは初めてだが、衝撃的な体験だった。<能>という芸術は、結局、<舞い>という身体表現を核に成り立っていることがよく分かった。特に今回は、上演前の能学者によるレクチャーが充実して…

今日のうた(133) 5月ぶん

今日のうた(133) 5月ぶん てのひらは扉をひらき出入りするたびに違った表情をもつ (尾崎まゆみ『女性とジェンダーと短歌』2022、上司の部屋の「扉」なのか、それとも自宅の「扉」なのか、普通は自分の「てのひら」には注意しないが、たしかに「扉をひらく」…

[今日の絵] 5月後半

[今日の絵] 5月後半 17 野田弘志:聖なるもの THE-1, 2009 「本来の僕の絵は、全部「存在論」です。だから存在するとはどういうことかを中心に考えて描いているわけで・・・、人が生まれて生きて死んでいく、それを美しいと思って見つめているわけです」(自註…

[今日の絵] 5月前半

[今日の絵] 5月前半 1 Caravaggio : トランプ詐欺師 1594 「トランプ」は西洋絵画でたくさん描かれている主題、ゲームを楽しむだけではなく、占い、賭けなどもある、カラヴァッジオのこの絵では、右側の男が詐欺師らしいが、中央の男も仲間かもしれない 2 Ja…

[今日の絵] 4月後半

[今日の絵] 4月後半 21 Mosaic detailing a Roman slave (ルーブル美術館) 人間を描いた絵の中でも、「労働」や「働く姿」は、描くに値する重要な主題だ、近代以降の絵に多いが、しかし古い絵にももちろんある、これはローマの奴隷、モザイクの大きな絵の一…

今日のうた(132) 4月ぶん

今日のうた(132) 4月ぶん 春の花の色によそへし面影のむなしき波のしたにくちぬる (建礼門院右京大夫、「春の桜の色のように美しかった平維盛さまは、ああ、熊野灘の海底で朽ちておしまいになった」、作者と親交のあった平氏の貴公子、平維盛は、一ノ谷の戦…

折々の言葉(2) 3,4月ぶん

折々の言葉(2) 3,4月ぶん 生きることの目的は、生きることそれ自体にあります。(ゲーテ「J.H.マイヤー宛書簡」) 3.4 生きているということは誰かに借りをつくること、生きてゆくということはその借りを返してゆくこと。(永六輔) 3.7 風立ちぬ、いざ生きめ…

[オペラ] R.シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》

[オペラ] R.シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》Metライブ Movixさいたま (写真上↓は本幕の舞台、視覚的に美しく、三人の妖精が中空から歌うのはとてもよかった、下の写真は序幕、ギリシア悲劇由来のオペラとイタリア喜劇を同時に混ぜてやれという伯爵命…

[今日の絵] 4月前半

[今日の絵] 4月前半 1 カリアティードの乙女 アクロポリス神殿 「カリアティードCaryatid」とは建築の支えとなる柱の彫刻のこと、頭にはバスケットがあり、アテナやアルテミスの神聖な饗宴に供するものを容れたとされる、カリアティードはやはり、アクロポリ…

今日のうた(131)  3月ぶん

今日のうた(131) 3月ぶん 少し狂って少し毀れてラジオ体操 (加藤久子『矩形の沼』、音楽+掛け声とともに行われるラジオ体操には、どこか不自然な感じがある、教師と大勢の者との「教練」関係が含まれるからだろう、このようにラジオ体操への批判的な視点は…

[今日の絵] 3月後半

[今日の絵] 3月後半 16 Turner : St. Erasmus in Bishop Islips Chapel, Westminster Abbey 1796 「道」もまた室内に劣らず人が存在する場所である。都市の道を描いた絵を少し見ていきたい。道にいる人はただ歩いているのではなく、それ以上のことをしている…

[今日の絵] 3月前半

[今日の絵] 3月前半 1王朝以前のエジプト、ナカダ時代の女性の像、今から5500年前頃 「今日の絵」は人間の美しさを探究しているので、彫刻も加えたい。これは踊っている女性だろう、何という美しさ、ブルックリン・ミュージアム所蔵 2 笑う埴輪 : 群馬県・藤…

[オペラ] ヘンデル《ジュリオ・チェーザレ》

[オペラ] ヘンデル《ジュリオ・チェーザレ》 川口リリア 3月3日 濱田芳通指揮、中村敬一演出。非常に面白いオペラだった。どこまでが原作通りで、どこが演出の付加なのかよく分らないが、中村は「バロックオペラは即興の要素が多い」と言う。今回はシーザー…

折々の言葉(1) 1、2月ぶん

折々の言葉(1) 1、2月ぶん 言葉は、口に出されると死ぬ、と人は言います、私は言います、いいえ、その日から、生き始めるのです (ディキンソン) [今日のうた][今日の絵]の他にも、[折々の言葉]を呟くことにします。週二回くらいです。1.14 沈黙と行動の間を …

今日のうた(130) 2月ぶん

今日のうた(130) 2月ぶん 揺れやすい豆腐のからだを火にかけてくちやくそくの束をほどいた (紡ちさと「東京新聞歌壇」1月30日、東直子選と評「湯の中の豆腐の様子と、あやうい自分の状態を結びつけた。口約束のまま果たされない約束をあきらめていく感覚を「…

[今日の絵] 2月後半

[今日の絵] 2月後半 14 Berthe Morisot : The Piano, 1889 少女というのは、一人でいるより集団でいる方が少女らしい、プルースト『失われた時を求めて』のヒロインの一人、少女アルベルチーヌは、最初集団の一員で登場する、日本のモーニング娘もAKBも集団…

[演劇] D.L.アベアー『ラビット・ホール』

[演劇] D.L.アベアー『ラビット・ホール』 横浜KAAT 2月24日 (写真↓で上にあるのは、4歳で死んだ息子の子供部屋) アベアーが2005年に書いた戯曲は、映画にもなっている作品で、この上演は小山ゆうな演出。4歳の息子が自宅前で車にはねられて死んだ、若い夫婦…

[映画] 松元ヒロ『テレビで会えない芸人』

[映画] 『テレビで会えない芸人』 ポレポレ東中野 2月22日 私はこの50年間TVをほとんど見ていないので、松元ヒロというお笑い芸人を知らなかった。しかし彼は、1985年に「お笑いスター誕生」でダウンタウンをおさえて優勝、「笑パーティー」「ザ・ニュースペ…

[オペラ] マシュー・オーコイン《エウリディーチェ》 Metライブ

[オペラ] マシュー・オーコイン《エウリディーチェ》 Metライブ Movixさいたま 2月18日 (写真↓は舞台、上はオルフェウスとエウリディーチェの結婚式の、海辺のダンス、下は、死んで冥界に降りてきたエウリディーチェ、エレベーターで降りてくるのがいい) ア…

[今日の絵] 2月前半

[今日の絵] 2月前半 1 Velazquez : A Young Lady, 1635 人物画の中でも、少女や少年はとりわけ美しく、どの画家も描いている主題といえる、今月は少年と少女の画のみを見比べてみたい、まずベラスケス、名門の家柄の令嬢だと思われるが、彼女が「お嬢様」で…

[演劇] オスカー・ワイルド『理想の夫』

[演劇] オスカー・ワイルド『理想の夫』 新国立劇場演劇研修所・15期生終了公演 2月5日 (写真上は、チルターン卿とその妻ガートルード、下は、ゴーリング子爵とチルターン卿の妹メイベル、俳優は頑張ったけれど、なかなか「貴族の雰囲気」を出すのは難しい、…