2006-01-01から1年間の記事一覧

ルーブル美術館展

[展覧会] ルーブル美術館展−古代ギリシア芸術 東京芸大・美術館 (写真左は、「トカゲを殺すアポロン」、右は「アフロディーテ(アルルのヴィーナス)」、ともにプラクシテレス作。) ルーブル美術館の古代ギリシア展示室は現在改修中で、その作品が日本で展示中…

モーツァルト『アポロンとヒュアキントス』

[オペラ] モーツァルト『アポロンとヒュアキントス』 モーツァルト劇場公演 高橋英郎:訳詞・台本、演出:三輪えり花、7月2日 浜離宮朝日ホール (写真は、公演チラシより。左から、アポロン、オエバルス王、メリア姫のつもり? それとも左はヒュアキントス?…

表象文化論学会

[学会] 表象文化論学会第1回大会 7月1、2日 東大教養学部 (初めて見るナマ浅田氏は、まったくこんな感じの若々しい人でした。『ニッポン解散』を出版したダイヤモンド社HPより近影。) 学会員ではないが、「人文知の現在」(浅田彰氏と松浦寿輝氏のトーク)…

映画『花よりもなほ』

[映画] 是枝裕和監督『花よりもなほ』 熊谷シネティアラ21 (写真左は、若い後家を演じる宮沢りえと、弱い侍役の岡田准一。写真右は、長屋の人々。古田新太、田畑智子、香川照之、千原靖史) 是枝裕和のデビュー作『幻の光』を観てからもう11年になるが、彼が…

プラハ室内『フィガロの結婚』

[オペラ] プラハ室内歌劇場『フィガロの結婚』(なかのZEROホール) (写真は、舞台より。) マルティン・オタヴァの演出が冴えている。『フィガロ』の持つコミカルな要素をクローズアップした効果と、現代衣装によるスタイリッシュな舞台が美しい。たとえば、ケ…

入不二基義『ウィトゲンシュタイン』(2)

[読書] 入不二基義『ウィトゲンシュタイン』(NHK出版、5月30日刊) (写真はウィト氏。入不二氏の愛猫キド氏と「家族的類似性」ありという説あり。ところでこの写真の背景は何でしょう? まさか彼の授業の板書では。どなたかご存知ですか?) 『青色本』を中心…

入不二基義『ウィトゲンシュタイン』(1)

[読書] 入不二基義『ウィトゲンシュタイン』(NHK出版、5月30日刊) (写真は、ガブリエル・キド氏。思索する著者にいつも同伴する哲学猫。) 入不二氏の新著が刊行された。本の全体像についてはアマゾンに書いたので、ここでは本書の第1章、すなわち『論考』に…

永井愛『やわらかい服を着て』

[演劇] 永井愛『やわらかい服を着て』 新国立劇場小H (写真は、2003年2月16日、イラク戦争に反対する世界同時デモを報じる翌日の朝刊を見入る、NGOの若者たち。「ねぇ、見て見て、世界中で1000万人以上だって。日本は渋谷に5000人か、もっとたくさんいたよね…

田島正樹『読む哲学事典』(4)

[読書] 田島正樹『読む哲学事典』(講談社現代新書) (写真は、1978年3月26日、占拠された成田空港管理塔。3月30日予定の開港は不可能になった。) 田島氏の著作には、アリストテレスやフレーゲなどの専門的な議論の合間に、「革命的法廷」「学園闘争」「三里塚…

田島正樹『読む哲学事典』(3)

[読書] 田島正樹『読む哲学事典』(講談社現代新書、5月21日刊) (写真は、アイスキュロス像。) 「問題解決としての、新しい意味の生成」というと、何か抽象的で、非常に難しい印象を受けるが、そうではない。それは歴史上さまざまなところで、現実に生じたこ…

田島正樹『読む哲学事典』(2)

[読書] 田島正樹『読む哲学事典』(講談社現代新書、5月21日刊) (写真は、ヘラクレイトス像。) 本書のコメントを続ける。「運と偶然」「自由と問題」「本質と時間」などの項目は、本書の実質的な主題である「新しい意味の生成」が、明示的に扱われている。ま…

青年劇場『尺には尺を』

[演劇] シェイクスピア:『尺には尺を』 高瀬久男演出・青年劇場公演、紀伊国屋サザンシアター (写真は、1989年、カナダのキャルーセル劇場公演。イザベラを演じるシュザンヌ・ジル=スミス。) 今月は、8日のアカデミック・シェイクスピア・カンパニの公演と…

田島正樹『読む哲学事典』(1)

[読書] 田島正樹『読む哲学事典』(講談社現代新書、5月21日刊) 田島正樹氏の新著が出た。私のブログにもよくコメントをくださるtajima氏である。本書は、「一人で執筆した」哲学事典であるが、さまざまな問題相互の連関がよく見える優れた書物になっている。…

宇都宮大学学生・共同研究『戦後元年』(2)

[読書] 宇大Dialogers『戦後元年 2005―ぼくらが未来を創造するために考えはじめたこと』(金子印刷所、2006.3.26) (写真は、「悲しみのアテナ」像。靖国問題を、悲しみの感情なしに考えることは、私たちにはできない。) 各章から、気の付いた点をいくつか。本…

宇都宮大学学生・共同研究『戦後元年』(1)

[読書] 宇大Dialogers『戦後元年 2005 ―ぼくらが未来を創造するために考えはじめたこと』(金子印刷所、2006.3.26) 宇都宮大学・教育学部の学生有志7人(女子5人、男子2人)が、「靖国問題」について自主的な勉強会を始めた。1年半にわたる読書会と討論は中…

高原基彰『不安型ナショナリズムの時代』

[読書] 高原基彰:『不安型ナショナリズムの時代』 (洋泉社新書、4月21日刊) (写真は、著者近影。朝日新聞4月27日夕刊より。) 著者は、1976年生れの東大大学院生だという。いかにも若者らしい新鮮な視点が光る好著だ。「嫌韓・嫌中」や「反日」といった、現…

コンヴィチュニー『皇帝ティト』

[オペラ] モーツァルト『皇帝ティトの慈悲』 コンヴィチュニー演出 二期会 新国立劇場 (写真右は、実在のローマ皇帝ティトス像。ルーヴル美術館。写真下は、舞台より。) モーツァルトの死(1791年12月)の直前、9月の初演だが、『魔笛』『レクイエム』と平行し…

内田樹『9条どうでしょう』(3)

[読書] 内田樹ほか 『9条どうでしょう』 (06年3月、毎日新聞社) (挿絵はエラスムス。『痴愚神礼賛』『平和の訴え』などがある。「自由意志」を巡って原理主義的なルターと論争した。反原理主義という点では、ミーハー人文主義者・内田氏とも通じる?) 内田…

内田樹『9条どうでしょう』(2)

[読書] 内田樹ほか 『9条どうでしょう』 (06年3月、毎日新聞社) (ウチダふうに、ちょいワルでセクシーなモンテーニュ? Jean-Yves Pouilloux著『モンテーニュ:私は何を知っているのか?』[Gallimard社]の表紙より) たとえば、たった今地球にやってきた宇宙…

内田樹『9条どうでしょう』(1)

[読書] 内田樹ほか 『9条どうでしょう』 (06年3月、毎日新聞社) (挿絵はモンテーニュ像) 内田樹氏はモンテーニュに似たところがある。どんな話題もこなせること、「私こそ知っている」という知の確信形に懐疑的なこと、モンテーニュがプロテスタントの原理…

ゲーテ『ファウスト』より

[気になる言葉] ゲーテ『ファウスト』よりメフィスト フェレスの言葉 (挿絵はドラクロワ作) 「なぜ、わざわざ<過ぎ去らせる>必要があるのか? 過ぎ去ってしまえば、初めから何も無いのと同じだ。俺は、永遠の虚無の方が[すっきりして]好きだ。」 解説: 我…

新国立劇場『十二夜』

[演劇] 山崎清介演出『十二夜』 新国立劇 場・小H (写真は、1969年、ジョン・バートン演出による、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニ公演。ヴァイオラを演じるジュディ・デンチ。20世紀で指折りの名演とされる。) 新しい工夫に満ちた、刺激的な『十二夜』…

上野千鶴子『生き延びるための思想』(4)

[読書] 上野千鶴子『生き延びるための思想』(2006年2月、岩波書店) (写真は『女の平和』。2002年3月、アメリカのコロラド大学における上演。悩むリュシストラテ。) 上野は、通常の国家暴力(男性兵士)ではなく、テロリズムという「対抗暴力」に着目し、女性…

上野千鶴子『生き延びるための思想』(3)

[読書] 上野千鶴子『生き延びるための思想』(2006年2月、岩波書店) (写真は『女の平和』。2003年7月、アメリカのスタンフォード大学における上演。ペニスに呆れるリュシストラテ。) 上野の議論のもう一つの柱は、国家が公認する殺人としての戦争の問題である…

上野千鶴子『生き延びるための思想』(2)

[読書] 上野千鶴子『生き延びるための思想』(2006年2月、岩波書店) (写真は『女の平和』。2000年10月、アメリカのサン・ディエゴ州立大学における上演。兵士の巨大なペニスは、戦争暴力のパロディでもある。) 「戦争という暴力」においては、加害者は同時に…

上野千鶴子『生き延びるための思想』(1)

[読書] 上野千鶴子:『生き延びるための思想』 (2006年2月、岩波書店) (写真はアリストファネス像。本書は、2500年前の『女の平和』を髣髴とさせる。) 上野千鶴子の最新論集。第3章「対抗暴力とジェンダー」(初出2004)が本書の白眉。上野は「これは本当に…

ケラ『労働者M』

[演劇] ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出 『労働者M』 渋谷コクーン (写真はポスターより、キャストの、堤真一、小泉今日子、松尾スズキ、秋山菜津子ら) ケラリーノ・サンドロヴィッチ(通称ケラ)は1963年生まれの日本人で、ロックバンドや劇団「ナイロ…

『ガラスの動物園』

[演劇] テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』 イリーナ・ブルック演出 新国立劇場小H(写真左は、イリーナ・ブルック) 20世紀後半のあの「演出家の時代」を創出したピーター・ブルックの娘、イリーナ・ブルックが演出。だが、必ずしも満足のいく上演では…

コンヴィチュニー『魔笛』

[オペラ] モーツァルト『魔笛』 コンヴィチュニー演出、シュツットガルト歌劇場日本公演、渋谷オーチャドホール (右の写真は、左手前に立つのがパパゲーノ。第2幕22,23場が「劇中劇」に改変され、観客を前に芸をするテレビ芸人になっている。左の写真は、第…

ベトナム戦争・写真展

[写真展] 「VIET★NAM」 東京都写真美術館(恵比寿) (左の写真は、1967年ハノイ。射撃訓練をする女性自警団員。マイ・ナム撮影。右の写真は、1969年8月9日、サイゴン。急遽編成された、南ベトナム政府の女子民兵。梅津禎三(朝日新聞社)撮影。私はこの両方の写…