[今日の絵] 11月後半

[今日の絵] 11月後半 17 Contrapposto / Kandinsky : On the dances of Palucca 1926 上の「コントラポスト」は、古代ギリシア彫刻以来、人間の最も美しいとされる姿勢、下は、カンディンスキーによるダンス振付けのポーズ集。今日から、人物画を「ポーズ」…

今日のうた(139) 11月ぶん

今日のうた(139) 11月ぶん 銃弾がベールを破って政治家の浅ましき実態さらけ出したり (森秀人「朝日歌壇」10月30日、佐佐木幸綱選、たった31文字の短歌が、安部元首相暗殺事件の本質を十全に表現する) 1 ドロップの缶を開ければ思い出す母の隣にいた男たち (…

[ミュージカル] わらび座『いつだって青空~ブルマー先生の夢』

[ミュージカル] わらび座『いつだって青空~ブルマー先生の夢』 蕨市民会館 11月23日 (写真↓は舞台、そして井口阿くり) 高橋知伽江の脚本・作詞によるミュージカルで、明治時代に日本に女子体育を導入した井口阿くり1871~1931の評伝劇。秋田県出身の井口…

[演劇] 大池容子『かがやく都市』 うさぎストライプ

[演劇] 大池容子『かがやく都市』 うさぎストライプ公演 アトリエ春風舎 (写真↓は、女子高校生・佐々木華が手にしている小さな人形、美術の授業で彼女はそれで遊んでいる、しかしもう一人の男子高校生・松崎は、都市の建物の模型を作った、この違いは大きい…

[今日の絵] 11月前半

[今日の絵] 11月前半 1 Boldini : パリ、クリシー広場1874 今日からはパリの街を、パリはヨーロッパの都市でも、もっとも多く絵に描かれた街、クリシー広場は大きな通りが幾つも交差する珍しい場所、この当時も大勢の人が行き交っている、まだ馬車の時代、荷…

[演劇] T.ウィリアムズ『欲望という名の電車』 文学座

[演劇] T.ウィリアムズ『欲望という名の電車』 文学座 紀伊国屋サザン 11月4日 (写真↓は、ブランチ[山本郁子]とステラ[渋谷はるか]、そしてスタンリー[鍛冶直人]) 高橋正徳演出。2002年に蜷川幸雄演出、大竹しのぶのブランチと寺島しのぶのステラを見たとき…

折々の言葉(5) 9・10月ぶん

折々の言葉(5) 9・10月ぶん 通行人は愛すべきもの。でも作家にひっかかるのは避けたい。なのに私はひっかかってしまった。ある日、Pに出会った。作家だ。彼は親しげに私の肩を叩きコーヒーに誘った。「君の例の作品読んだよ」、彼は言った。「ほんと?」(ド…

[オペラ] ヘンデル《シッラ》

[オペラ] ヘンデル《シッラ》神奈川県立音楽堂 10月30日 (写真↓は、出演者と舞台、ピーター・ブルックを思わせる、枠と棒のみの現代アート風の簡素な舞台装置だが、終幕、天井から二本の布が垂れて、空中をダンサーが舞うという、彌勒忠史演出が素晴らしい、…

今日のうた(138) 10月ぶん

今日のうた(138) 10月ぶん 遠方とは馬のすべてでありにけり (阿部完市『純白諸事』1982、「馬が遠くにいる」というのが、作者にとって「馬」の原光景なのだろう、競馬を遠くから見たのか、それとも放牧された馬を遠くに見たのか、それとも遠い昔、幼少の頃、…

[今日の絵] 10月後半

[今日の絵] 10月後半 19 Aphrodite. Parian marble, 330-300 BC 「パリアン大理石」とは、古代ギリシアのエーゲ海パロス島で採石された、きめの細かい半透明の大理石で、その純白が非常に美しい、アテネで発見されたこのアフロディーテ頭像も、顔に滑らかな…

[今日の絵] 10月前半

[今日の絵] 10月前半 1 Jacques-Émile Blanche : プルーストの肖像1892 明日からは、プルースト『失われた時を求めて』に出てくる絵を少し紹介、最近、岩波文庫版の訳者吉川一義氏が中公新書に纏められた、まずプルースト1871~1922の21歳のときの肖像から、…

[オペラ] ヘンデル《ジュリオ・チェーザレ》 新国

[オペラ] ヘンデル《ジュリオ・チェーザレ》 新国 10月10日 (写真↓は、クレオパトラの侍女ニレーノを歌う、新進のカウンターテナー村松稔之、歌舞伎の女形よりもずっと女に見える、ミーハーの女の子女の子したニレーノを完璧に演じきった) 3月に川口リリアで…

[演劇] テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』 ヴァン・ホーヴェ演出

[演劇] テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』 ヴァン・ホーヴェ演出 新国 9月28日 (写真↓はアマンダ[イザベル・ユペール]とローラ[ジュスティーヌ・バシュレ]、そしてトム[アントワーヌ・レナール]、ローラはトムの姉だが妹のように可愛い) 『ガラスの…

今日のうた(137) 9月ぶん

今日のうた(137) 9月ぶん 粧はぬ清き匂ひのかすかにて相病む夜毎メルヘンに寄る (相良宏『相良宏歌集』1956、相良宏1925~55は若くして結核で死去、短歌仲間の福田節子という若い女性もおそらく同じ療養所に入院して亡くなった、思いは告げなかったが彼は彼…

[今日の絵] 9月後半

[今日の絵] 9月後半 16 Dürer : 13歳の自画像1484 当時、自分一人を描く「自画像」は非常に珍しかった中で、堂々と自分だけを描いたのがデューラーと言われる、彼は28歳の時自分をキリストになぞらえた自画像を描いているが、これはそれより15年前、それにし…

[演劇] シェイクスピア『ヘンリー八世』 さいたま芸術劇場 9月21日

[演劇] シェイクスピア『ヘンリー八世』 吉田鋼太郎演出 さいたま芸術劇場 9月21日 (写真↓は終幕、右側の新王妃アン・ブリン[山谷花純]が抱いている赤ん坊が後のエリザベス一世、中央がヘンリー八世[阿部寛]) シェイクスピア最後の作品で(1613年初演)、戯曲…

[今日の絵] 9月前半

[今日の絵] 9月前半 1ヒエロニムス・ボス : 卵のコンサート1475-1480 今日からは「音楽」、絵は音を出さないが、音楽は絵に描かれる、音楽は最初は神話や宗教と結びついていたのか、この絵も悪魔など聖書の寓話性を感じさせる、ボス1450頃~1516は初期フラン…

[演劇] デュレンマット『加担者』

[演劇] デュレンマット『加担者』 下北沢・駅前劇場 9月2日 (写真↓は舞台、倉庫の地下5階で、死体を溶解して下水に流す作業が行われている、事実上の主人公の3人は、左から、(マフィアの)「ボス」、警察幹部の「コップ」、生物学者の「ドク」(=ドクター…

[演劇] マゾッホ原作『毛皮のヴィーナス』

[演劇] マゾッホ原作『毛皮のヴィーナス』 シアター・トラム 8月31日 (写真↓は終幕、ワンダ(高岡早紀)とゼヴェーリン(溝端淳平)) マゾッホ原作の小説を、アメリカのD.アイヴズ1950~が演劇化2011したもの。性倒錯を表わすとされる「マゾ」や「サド」の名称は…

[今日の絵] 8月後半

[今日の絵] 8月後半 20 フランツ・ヴィンターハルター : 大公女オリガ・ニコラエヴナ1856 今日からは「花と女性」、女性の肖像画には花も描かれていることが多い、互いに引き立てあうのか、この絵ではバラが手前に突き出すように保たれている、モデルは皇帝…

今日のうた(136)  8月ぶん

今日のうた(136) 8月ぶん みんな詩を書くのがすきでわがままでみんな蛍を見たことがない (湯島はじめ「東京新聞歌壇」7月31日、東直子選、小学生だろうか、誰も蛍を見たことがないけれど、「蛍」の詩をじゃんじゃん書いている、ちっとも悪いことじゃない、江…

折々の言葉(4)  7,8月ぶん

折々の言葉(4) 7,8月ぶん 愛はとどまろうとする時、錆びた一本の釘に変る。(野田秀樹『パンドラの鐘』) 7.11 スパルタにおいては、犯罪が罰せられるのではなく、不手際が罰せられる (ルソー『新エロイーズ』) 15 男の人に「愛してる」なんて言われるより、私…

[今日の絵] 8月前半

[今日の絵] 8月前半 1 de Vinci : Portrait of Ginevra de' Benci 1474 ジネーヴラ・デ・ベンチはフィレンツェの貴族で、有名な美女だった、彼女の16歳の時の結婚を記念して描かれたと言われている、ダ・ヴィンチの描く人物はとても美しいが、どこか冷たさの…

[今日の絵] 7月

[今日の絵] 7月 11 Velázquez : 侍女たち 1656 フーコー『言葉と物』によれば、これはルネサンス期から古典主義時代への移行を示す画期的な絵。本来くっきりと描かなければならないモデルの国王夫妻は、中央の鏡の中にぼんやりと描かれ、存在感がなく、まっ…

今日のうた(135) 7月ぶん

今日のうた(135) 7月ぶん 炎帝や宇宙由来の吾のゐる (加藤草児「朝日俳壇」7月10日、小林貴子選、「リュウグウの砂からアミノ酸が見つかった。我々地球の生命も宇宙から来たのか」と選者評。夏の太陽の輝きと、ハヤブサ2が持ち帰った小惑星リュウグウのアミ…

[今日の絵] 6月後半

[今日の絵] 6月後半 15 Modigliani : Madame Georges van Muyden, 1917 「ジョルジュ・ヴァン・ミュイデン夫人」はモディリアーニの知人なのか、彼の描く女性の美しさは、ある種のきわだった簡潔さに由来するのかもしれない、シンプルな顔、二次元平面的なド…

今日のうた(134) 6月ぶん

今日のうた(134) 6月ぶん 衣更(ころもがえ)駅白波となりにけり (綾部仁喜、6月1日は「衣更え」、女子高校生の紺色の制服が、夏の白色の上衣に変る、一人だとどうということもないけれど、駅のホームに大勢いると、「駅白波になりにけり」) 1 生きかはり死に…

折々の言葉(3)  5,6月ぶん

折々の言葉 5月 他のどんな人が取り組んでも、それを始めた当人ほどにはうまく完成されないような仕事がこの世にある。(デカルト『方法序説』) 2 歩いて旅をすること、それはタレス、プラトン、ピタゴラスのように旅をすること。哲学者たる者がどうして他の…

[演劇] 野田秀樹『パンドラの鐘』 杉原邦生演出

[演劇] 野田秀樹『パンドラの鐘』 杉原邦生演出 コクーン 6月24日 (写真は↓終幕近く、パンドラの鐘の下に立つミズオ(成田凌)とヒメ女(葵わかな)、この直後、ヒメ女は自らの意志で鐘の中に閉じ込められ、死ぬ) 1999年に世田谷パブリックシアターで、野田秀樹…

[演劇] 宮本研『美しきものの伝説』

[演劇] 宮本研『美しきものの伝説』 俳優座劇場 6月17日 (写真↑は、左から堺利彦、伊藤野枝、荒畑寒村) 実演を観るのは、この鵜山仁演出が二度目。。今回は科白をじっくり味わうことができた。終幕直前の大杉栄の言葉が素晴らしい。「花で飾った一本の杭を立…